8割は「ネットを信用しない」というが……
だれが考えても「憂慮すべき現象」なのは間違いない。問題はどうすれば、虚偽のニュースの流布を防げるのだろうか、である。
読売社説は「主権者である国民が、正しい情報に基づいて判断する。それが民主主義の大前提である。政治的な意図を有する悪意の流布には、特に警戒が必要だろう」と書く。
「誰もが情報の発信者になれる時代だ。偽ニュースの多くは、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて広まる」
「日本でも、東日本大震災や熊本地震の際には、原発事故などに関して、事実とはかけ離れた情報やデマがネット上に流れた」
読売社説は元凶がSNSにあり、日本でも問題になっていると指摘した後、「読売新聞の世論調査では、ネットなどに多くの偽情報が流れている、と感じる人が81%に上った。公正・正確な報道が従来にも増して求められていると言えよう」と分析する。
8割を超す国民がネットを信用していないというが、それでもネット利用者は増え続け、フェイクニュースも広がる。大きな矛盾である。
読売社説は「丹念な取材に裏打ちされた事実のみを掲載し、現状を的確に分析する。新聞に期待される役割を改めて胸に刻みたい」と主張する。まさにその通りだ。
しかし前述したようにネットの偽情報をそのまま記事にする浅はかな記者もいる。新聞記者として適格な人物の採用と、記者教育の徹底が新聞社に求められていると考える。
沙鴎一歩も新聞社に入社後、地方支局に配属され、そこで数年間に渡り、デスクやキャップに取材相手との付き合い方やネタの取り方など「新聞記者のいろは」を教え込まれたものである。
毎日はフェイクの害悪を2つに分析
15日付の毎日新聞も社説で「きょうから新聞週間 フェイクは民主制を壊す」との見出しでフェイクニュースの問題を取り上げている。
その毎日社説は「フェイクニュースがもたらす害悪は、大きく分けて二つある」と書く。
「一つは偽情報が紛れ込むことによって、社会で基本的な事実認識が共有しづらくなることだ。デマを信じる人と議論し、合意を求めても、理解を得るのは難しい」
「もう一つは、権力者が自分に都合の悪い報道を『フェイク』と決めつけることで、メディアの監視から逃れようとすることだ。この手法を多用している典型例がトランプ米大統領であり、米国の既存メディアの信頼度を低下させている」
この毎日社説の分析もしっかりしている。事実認識が共有できなければ社会そのものが崩壊しかねない。ただ後者の「米国メディアの信頼度の低下」については、どうだろうか。米国のメディアは日本のメディアより頼れる場面も多い。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの記者たちは、「フェイクニュース」の使い手であるトランプ米大統領にも毅然と対抗している。テレビ中継などでホワイトハウスの記者会見を見ていると、記者たちのがんばりようがよく分かる。
一方、日本の記者たちは、安倍首相の記者会見のとき、毅然と質問できているだろうか。「1強」の安倍首相にもひるまず、きちんと意見をぶつけるべきである。