多用される「民意を問う」という言葉
今回の衆院選でも、候補者は「民意を問う」という言葉を多用するだろう。しかし多数決が必ずしもいい決め方とは言えない以上、選挙結果を安易に民意と呼ぶべきではない。選ばれた政治家が民意を代表しているという理屈で、好き勝手にやる考えは成立しない。
政治家を選ぶことと政策を選ぶことがイコールではない事実を表すのが、「オストロゴルスキーのパラドックス」である。
政党AとBが財政、外交、環境でそれぞれ別の政策を打ち出しているとする。これに対して、有権者1は財政と外交ではAを、環境ではBを評価し、総合評価で支持政党はAになった。同様に、ほかの4人の有権者も総合評価で投票した場合、Aに2票が集まり、Aが選挙に勝つ。
だが仮に財政、外交、環境のそれぞれの項目で多数決をとると、すべての政策でBがAを上回るのだ。これはマニフェストが「政策の抱き合わせ販売」ゆえに、起きる現象とも言える。この真逆の結果を見て、多数決の選挙で勝った政党や候補が、「民意に支持された」と言い切れるだろうか。