「なぜ」を繰り返して「相手の望み」を探る

私は、これまでの人生で何度となく逆境に遭遇してきた。その都度、自ら知恵を出して逆境をはねのけてきたわけだが、本当の知恵を出すために、私はなぜ、なぜ、なぜと何度も「なぜ」を繰り返す。すると、最終的には商売相手や消費者の「望み」に辿りつくことになる。人間は自分の望みをかなえるためにすべての行動を起こしているわけだが、なぜを何度も繰り返していくと、相手の望みがくっきりと見えてくるのだ。そして、本当の知恵とは、この望みを最も有利な条件でかなえてあげる方法にほかならない。

雪国まいたけは、昨年10月、バングラデシュでもやしの種子である緑豆を生産する合弁企業、「グラミン・ユキグニマイタケ」を設立した。インドのグラミン銀行と連携した、ソーシャル・ビジネス(ビジネスによる問題解決)である。

弊社はグラミン・ユキグニマイタケが生産した緑豆の6~7割を国際価格で買い取っているが、こうすることでグラミン・ユキグニマイタケは残りの3~4割を食用として低価格販売できる。緑豆の生産はバングラデシュに雇用を創出するだけでなく、食糧の安価な供給にも貢献しているのである。

なぜ、グラミン銀行との連携を決断したのかといえば……。

いまここに、2袋のもやしがあるとしよう。ふたつは、まったく同じ重量、同じ品質、同じ価格である。一方は普通のもやし、他方はそれを買うだけで社会貢献ができる「雪国もやし」である。「経済的負担は負いたくないが、社会貢献はしたい」と考えている消費者なら、迷わず後者を選ぶはずである。その結果、雪国もやしの消費量が増えていけばコストダウンが可能になり、弊社の利益にも貢献することになる。

消費者の購買動機には大きく、価格と品質というふたつの要素があるが、私は今後、「社会貢献」という要素が購買動機として重要になると予測している。しかし、社会貢献をしたい消費者は多くても、誰もがお金を払えるわけではない。そこで、「選択」するだけで社会貢献ができる仕組みをつくり上げたわけである。

これも、消費者の望みを最も有利な条件でかなえる方法を考え抜いた結論。すなわち、本当の知恵なのである。

※すべて雑誌掲載当時

雪国まいたけ社長 大平喜信 
1948年、新潟県生まれ。中学校を卒業後、川崎市の工務店や南魚沼市の工場などで働く。75年大平もやし店創業。82年まいたけ栽培を開始。83年雪国まいたけ設立。94年新潟証券取引所、2000年東証二部上場。2011年3月期の連結売上高は265億円。
(山田清機=構成 永井 浩=撮影)
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