そして、今年7月に登場した「デコ文字」では、さらなる文字への回帰が起き始めています。これはLINEの絵文字を文字にしたもので、懐かしのガラケー時代の「デコメ」が再来したようにも思えます。

デコ文字だけで会話する遊びもユーザーの間で発生。

「デコ文字は、現段階では『将来的に表現の幅を広がられればおもしろいかな』という試験的なものです。表現が広がっていくと、さらにコミュニケーションも豊かになりますので、いろいろなものを試しています」(石川さん)

LINEスタンプの流行の歴史を振り返ってみると、つねにシンプルな表現とリッチな表現の間で「揺り戻し」が起きているのがわかります。テキストから画像、動く画像という動きがあれば、「顔文字」が復活する動きもあるのです。ちょっと動くだけの顔文字が、いまさら流行している。そんな21世紀は想像していませんでした。まさか、ここまで顔文字というカルチャーが不死鳥のようによみがえるとはびっくりするしかありません。

ユーザーが遊び、公式が追う

有料のスタンプを購入しているユーザーの場合、「友人から送られてきたものを気に入って買う」というパターンも多いそうです。

「LINEはやはり10代・20代の利用がアクティブですが、スタンプを購入するのは10代・20代だけではありません。やりとりにカドが立ちにくいものが好まれるようで、白くて丸っこいキャラクターの人気が出やすいですね」(石川さん)

スタンプの種類を増やすほどに、以前に買ったものは奥に移動していくUIを見ればわかるように(編注:設定で並び替えの変更は可能)、LINEというアプリはたくさんのスタンプを使いこなす設計にはなっていません。

それでもこれだけの人が遊んで、はやりすたりの歴史が生まれています。その動きが「クリエイターズマーケット」というユーザー主導の場から勝手に生まれ、運営はそれを追う立場にあるというのは、実に今のネットサービスらしい姿です。

私はそれほどスタンプにこだわりがあるタイプではないと思っていますが、それでもスタンプを1日に1つも使わないことはありません。いまでは当たり前のようにスタンプを使っていますが、これはすごいことです。なぜなら毎日使うものこそが偉大な発明であり、日々の生活を変えていくものだからです。

たかがスタンプ、されどスタンプ。今のスタンプのカルチャーを生み出しているのは、クリエイターズマーケットであるということ、これだけはぜひ覚えておいていただきたいです。

いしたにまさき
ブロガー、ライター、WEBマーケティングアドバイザー。2011年アルファブロガー・アワード受賞。Webサービス、ネット、ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』運営。共著に『ツイッター 140文字が世界を変える』(マイコミ新書)、『クチコミの技術』(日経BP社)など多数。そのほかに、内閣広報室IT広報アドバイザー、Evernote コミュニティリーダー、ScanSnapアンバサダー、ひらくPCバッグなどカバンデザイナーも手掛ける。
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