その前提が大きく変わったきっかけは、14年にスタートした「LINE Creators Market(クリエイターズマーケット)」でした。ユーザーが自分でスタンプや「着せかえ」を制作し、LINEの審査を通ればアプリ上のショップなどで販売できる仕組みです。

「クリエイターズマーケット」では当初から、文字入りのスタンプを審査で制限することはしていなかったそうです。その結果、あいさつや敬語、人名といった文字入りスタンプがどんどん生まれていきました。

LINEの公式キャラクター「ムーン」も、最初期(左)は無言だったが、15年リリースの「ムーンのクリぼっち」では饒舌に。

「クリエイターズマーケットが登場してからは、その動向がスタンプの流行を左右するようになっています。公式スタンプがその流れに乗っかる場合もあります」(石川さん)

方言、敬語、吹き出し…四半期に一度流行が誕生

15年からはやり始めたのが、方言ネタを使ったスタンプです。続いて敬語ネタのスタンプもどんどん増えました。その次にはやったのが、「吹き出し」のついたスタンプだったそうです。

「スタンプ自体がトーク画面の吹き出しの形をしており、吹き出しにキャラクターなどが入っています。これまでと少し違う、グラフィカルな表現が受けたようです。最近ではこの吹き出しの中に顔文字が入っていて、その顔文字がちょっと動くものも登場し、より発展をとげています。だいたい四半期に一度ぐらいの割合で何かしらのブームが起きていますね」(石川さん)

なぜ「文字なしスタンプ」は、数を減らしてしまったのでしょうか。その理由を、石川さんは「意味の取り違えが防げるからではないか」と分析します。「たとえば『おじぎ』をしているスタンプがあって、そこに文字がなかった場合、『ありがとう』なのか『ごめんなさい』なのかわかりにくい場合があります。文字が入っていれば、そういうニュアンスの取り違えを防げますよね」。

LINEの公式キャラクターを使ったスタンプや、アニメ・マンガ作品などのIP(知的財産権)コンテンツでも、今や「文字入り」が当たり前です。『スター・ウォーズ』のダースベイダーが「御意」や「NO」と話しているスタンプまで登場しています。これもスタンプがユーザーのニーズに応えてきた結果と言えるでしょう。