マイクを味方に、スピーチを制する

以上、スピーチの3原則をまとめましたが、脇役の重要性も加えておきましょう。それはマイク性能や会場設備、雰囲気などです。

広い会場なのにマイクの性能が悪く、壇上でのスピーチが会場の後方まで届かない場合。皆の意識がマイクの調整具合に向かったり、私語が飛び交ったりします。どんなに素敵な話の内容も、届きません。そんな場合は、マイクの調整が終わるまで、私はあえて立ち止まって、待ちます。それでもダメなら、マイクは使わずに地声で話す。むしろ会場の皆さんは一生懸命耳を傾けてくださいます。

そもそも日本人はマイクの扱いに無頓着な人が多い。あれだけカラオケで鍛えているはずなのに。

実は、「選挙とカラオケは、センキョクとマイク次第」というのが私の持論です。選挙区と選曲、どちらも大切ですが、それ以前にマイクの音量や質が悪ければどんな美声でも割れてしまい、伝わるものも伝わりません。選挙中ならガラガラ声も「頑張っているな」と褒められもしますが、スピーチではやはり美しい声を聞きたいもの。安物の音響は使わず、主催者が用意した会場ならば、自分の声がどのように響いているのか常にチェックすることも大切です。

スピーチは聞いてもらえなければ意味がありません。成否を分けるのは、「自分の話を伝えたいという意志」の有無です。意志があれば、おのずと話し方に工夫も生まれます。草稿を練るのも大切ですが、話す技術と意志を高めていきたいですね

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。
(構成=三浦愛美 撮影=原 貴彦 写真=日刊現代/AFLO)
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あの人の話し方を勝手に分析!