本当の勝負は、「夏休み後の客層」
「予想より好調」という駅ナカスタバだが、本当の勝負はこれからだ。ジェイアール東日本フードビジネスと組んで、次なる「改札内出店」はあるのか? 筆者がそう質問すると、広報担当者の答えは慎重だった。
「まずは、『JR秋葉原駅ラチ内店』の状況を見て――になりますね。まだ開業して1カ月ですから」
ただし、スターバックスの出店意欲は旺盛だ。最新の国内店舗数は1288店を数え、2位の「ドトールコーヒーショップ」の1120店を引き離す(いずれも2017年6月末現在)。かつてスタバが、コンビニ向けに「チルドカップコーヒー」を開発した際に、当時の広報担当はこう話していた。
「スターバックスの店舗出店のない地域にもコンビニはあり、店舗数も当社のコーヒーショップとはケタ違いなので、お客さまの『スターバックス体験』を増やしたいのです」
「テイクアウト専門店」に来店客が求めるもの
国内47の全都道府県に出店した現在も、「スタバ体験」を増やしたいという意欲は衰えていない。「テイクアウト専門」のスタバに来店客が求めるものを、学生時代にスターバックスのアルバイト経験が長かったという女性(20代前半)に聞くと、次のような意見だった。
「たとえ移動中でも、ホッとしたいお客さまが多いのだと思います。そうした方にとって、スタバは『体験型の店』なのではないでしょうか。私はサービスエリアの店舗にヘルプで行っていたこともありますが、立ち寄られるお客さまに、『行ってらっしゃい』『楽しんできてください』と笑顔でお声がけしていました。前者は仕事やイベントでの移動途中らしき方、後者は明らかにテンションの高い方――と使い分けましたが、多くの人が笑顔で返してくださいました」
こうして考えると、「駅ナカスタバ」は有望そうだが、今後の判断には、夏休み後の客層の分析が必要だろう。夏休みの観光客だけではなく、日常に戻ったときにビジネスパーソンなどが、どんな消費行動を起こすかわからないからだ。
写真で紹介したように、近くの「ミルクスタンド」は1本100円程度で飲め、お客さんも多かった。となれば、移動途中で「ひと息つくか」「止まり木として利用するか」の違いだろう。現代の消費者は、同じ人が「その日の気分で店を使い分ける」といわれるが、はたしてどうだろうか。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。