視察時にドリンクを飲みながら周囲のお客さんを観察すると、スマホなどモバイル機器を駆使する人も目立った。ちなみにこの店は公衆無線LANに対応しており、電源用コンセントもある。開店1カ月の業績について聞くと、「当初の予想より、多くのお客さまに来ていただいている」(スターバックス広報)との答えだった。数字や客層分析はこれからだが、滑り出し順調のようだ。

(上)店内の様子。視察時は店員がコーヒーの試飲を呼びかけていた。(下)店内壁面にはレンガがあしらわれている。立ち飲みのテーブルには電源コンセントも。

「どうせならスタバ」の消費者心理

それにしても、テイクアウト(この言葉は和製英語で英語では「to go」)をするだけなら、駅近くや駅構内に大手コンビニもあれば、JR東日本グループのコンビニ「NewDays(ニューデイズ)」もある。「通常のテイクアウトならコンビニコーヒーで十分」(40代女性)という人も増えたなか、秋葉原駅の利用客が「スターバックス」を使う理由を考えたい。

(1)「どうせ利用するならスタバ」との思い

コンビニが「100円コーヒー」を提供する一方で、スタバでコーヒー(ドリップコーヒーS、アイスコーヒーS)を頼むと302円する。それでも利用するのは、移動途中での“観光気分”ではなかろうか。

筆者の視察時は夏休み期間中だったので、スーツケースやキャリーバッグ姿の来店客も目立った。服装をみる限りは、ビジネスパーソンではなく、おそらく観光客だろう。そうなると「脱日常」なので、「いつもの100円コーヒー」では味気ない。スタバの「顧客満足度」は落ちているが、「期待感」は依然として高いのは、日本生産性本部の調査(※)でも裏づけられている。

※詳しくは拙稿「スタバ満足度「圏外」に落ちた3つの理由」(http://president.jp/articles/-/22445)を参照いただきたい。

(2)ワンコインでの“脱日常”

一生懸命働いても思うように収入が伸びない時代を反映して、消費行動に“コスパ”(コストパフォーマンス)を重視する人が増えた。コンビニの「100円コーヒー」はその象徴だ。一方で、ワンコイン(500円玉)での“脱日常”を楽しむ人もいる。

たとえば、首都圏を中心に約200店を展開する「天丼てんや」では、みそ汁付きで並盛500円(税込み)の「天丼」が夕食需要としても人気だ。大手チェーンの「牛丼」(並盛350~380円)に比べて、天丼のほうが夕食として“上質感”があるからだろう。昼食時にワンコインランチを楽しむビジネスパーソンも多い。スターバックスの「300円コーヒー」は、こうした層にも利用されているのだろう。

ホーム脇には“昭和レトロ”なミルクスタンドがある。スタバがあるのは、その奥だ。