国内におけるカフェ店舗数トップで1200店を超えるスターバックスが、7月14日、JR秋葉原駅の改札内に「座席ゼロ」の駅ナカ店をオープンした。場所はスタバの立地イメージとは異なる、“昭和レトロ”な場所だ。この場所に出店する意図はなにか。『日本カフェ興亡記』や『カフェと日本人』などの著書がある経済ジャーナリストの高井尚之氏が分析する――。

JR秋葉原駅の「乗り換え通路脇」に出店

“アキバ”こと秋葉原は、かつては「家電の街」として知られ、現在は家電に加えて「IT」「電子部品」「オタク」「会えるアイドル」など多彩な表情を持つ街だ。海外からも多くの観光客が訪れるのはご存じのとおり――。その玄関口となるJR秋葉原駅には、山手線・京浜東北線・総武線などが乗り入れる。JR東日本が発表した2016年度の「1日平均乗降客数は24万6623人」と同社管内で第9位の多さで、近年の乗降客数の伸びも著しい。

こうした性質を持つ同駅の改札内に、7月14日「スターバックスコーヒー JR秋葉原駅ラチ内店」がオープンした。“駅ビル”ではなく、“改札内”なのが特徴で、「座席がなく、テイクアウト専門」だという。評判を耳にして、足を運んでみた。

「スターバックスコーヒー JR秋葉原駅ラチ内店」の外観

“昭和レトロ”な場所に出した理由

出店場所は「総武線乗り換え通路の横」と聞いていたが(正式には「総武線6番線ホーム乗り換え連絡通路脇」)、実際に行くと「ああ、ここか」と思う場所だった。「駅ナカ」のカフェといえば、最近はスタイリッシュな“ショッピングストリート”に出店するケースが多いが、そうではなく、すぐ近くには「ミルクスタンド」も「立ち食いそば店」もある。筆者は、出版社勤務時代は隣の御茶ノ水駅に、メーカー勤務時代は、秋葉原から4つ目の亀戸駅に通勤していたが、当時と雰囲気が変わらない“昭和レトロ”な場所だ。

ただし、前の通路を往来する人は多い。前述したように利用客が多い駅だからだ。なぜ、この場所に出店したのか、スターバックスコーヒージャパンの広報に聞いてみた。

「今回の出店理由は、大きく分けて2つです。1つは利便性のよさで、もう1つは、当社と相手先企業とのニーズが合致したこと。駅構内のスペースでのカフェ出店を検討していた、ジェイアール東日本フードビジネスさんと、かねてJR東日本の駅構内での出店に魅力を感じていた当社、それぞれの思惑が一致したのです。かつて、近くにあった万世橋駅を意識して、店内の壁面には赤レンガを使ったり、装飾に枕木を用いたりしています」

ちなみに出店場所は「旧ベックスコーヒーショップ秋葉原店」の跡地だ。「ベックス」は、前述のジェイアール東日本フードビジネス(JR東日本の外食事業会社)が手がけるブランドで、自社ブランドの跡地にスタバを誘致したことになる。広報の話でわかるように、「JR秋葉原駅ラチ内店」は、スターバックスの直営店ではなく、ライセンス契約の店だ。

店舗面積は75.4平方メートル(22.8坪)と広くはない。「テイクアウト専門店」と聞いていたが、注文した後、店内で立ち飲みはできる。あくまでも「座席ゼロ」なのだ。このタイプのスタバは、高速道路のSA(サービスエリア)などにもある。