知事の多選化を防ぐために「条例」の制定を
――つい混同してしまいますが、日本の場合、国は議院内閣制であるのに対し、地方は大統領制に近い首長(知事、市長など行政の長)と議会との二元代表制。日本の有権者が地方の長期政権に甘いのは、地方議会が国会のように行政をチェックしてくれると勘違いしているからでは?
【松沢】そうかもしれません。議院内閣制では国会が首相を指名し、首相が内閣を組織して行政に当たります。一方、日本の地方自治制度はアメリカの制度にならった二元代表制、つまり大統領的な首長と議会が両方とも民意を反映するものです。このふたつは原理的に異なります。
議院内閣制では国会の多数派(与党)が内閣を支え、少数派が野党として批判的に行政をチェックします。もちろん与党は首相を支える立場ですが、その支えがなければ首相の地位はないわけですから首相は与党の声を聞かなくてはならない。ところが二元代表制だと、首長は選挙で選ばれていますから議会には厳密な意味での与党も野党もありません。ですから首長は首相と違って“与党”の声をさほど気にする必要はないのです。
しかも知事など首長の権限は強大です。役所の人事権はもちろん予算編成権、条例提出権を握っています。すると先に述べたとおり、長期政権下では議会のオール与党化が進み、議会は行政をチェックするどころか、絶対権力者である知事とのパイプを生かして選挙区に利益誘導することばかりを考えるようになってしまうのです。
――知事などの地方権力はそもそも権限が強いうえ、構造的に多選化しやすく、それに対するチェックも甘くなりがち。そこで法律なり条例で多選を禁じる必要があるということですね。
【松沢】そうです。アメリカのような大統領制をとる国では、大統領の任期をほとんどが2期までと憲法などで制限しています。また州知事や市長といった首長についても、アメリカでは多くの自治体が多選を禁じています。これは前にあげた長期政権の弊害を防ぐためです。そこで私は神奈川県知事になってからすぐに多選禁止条例をつくりました。