用意周到で几帳面な土井と、開放的で順応が早い野村の性格の違いから、部屋の使い方、日中の行動の仕方などをめぐって、2人の間にはたびたびギスギスした空気が流れる。花を活けようとする野村に、土井は逐一口出しをしてしまう。野村が「土井さん、けっこう冷たかったですよ」「どう思ってます? 僕のこと」と率直に尋ねると、土井は、「男同士で真面目に言われることってないから答えにくいよな。そんなものは感じることで、口に出してどうのこうの言うことじゃない」と一度はつっぱねてしまうが、結局そこで膝を突き合わせて話し合いをする。そこから徐々に、2人の空気はよくなっていき、最終日前日、また花を活ける野村に土井が「花の似合う男になってきたな、かわいい」と気持ちを言葉にするまでになった。
土井は1日早く帰国するため、2人での滞在最後の日、野村に「チェ・ゲバラのTシャツ買うといて」と頼む。すると、野村はトイレに行くふりをして、そのTシャツとエプロンを持って現れる。土井がそれを欲しがっていたことを覚えていて、こっそり買っていたのだった。しかもおそろいで。2人はその後、カリブ海を眺めながら葉巻を吸い、「土井さんでよかった」「周平くんでよかった」と言い合って空港で別れる。振り返るタイミングは少しずれながらも、ちらちらとお互いを意識している姿がとんでもなく……よかった(もうそれ以外の言葉が思いつかなかった)。
野村と土井、それぞれの変化とその後
翌日、野村はひとりで朝食をつくるとき、土井のオムレツ作りを思い出し、見様見真似でやってみる。すると不思議なことに、初めてなのにうまく作ることができたのだ。野村がこの旅で得た変化が、そのオムレツのシーンに見えた気がした。
土井のほうにも、変化はあった。『チョイ住み』放送前、土井が料理番組にチェ・ゲバラのTシャツを着て出演したのが、ツイッターなどで話題になっていた。視聴者には、土井がなぜそんな服を選んでいるのかわからなかったからだ。その後この番組が放送されたことで、あのTシャツは野村との友情の証しだったのだと明かされる。ロケだけにとどまらず、その後のエピソードまで含めて、2人の感情が伝わってくる番組であった。