胃がん
今年度から、胃がん検診の対象年齢が従来の40歳以上から50歳以上へ、検診間隔も年1回から2年に1回へと変更された。胃内視鏡検診も並行して推奨されると決まり選択肢は広がったが、ここで1つ課題が生じる。内視鏡検査を行う医師の絶対数が足りず、地域偏在も大きいのだ。この解決策として「胃がんリスク分類」とそれを応用した「ABC検診」が注目されている。
胃がんリスク分類とは、血液検査で胃がんの原因菌であるヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)感染の有無と、ピロリ菌感染で生じる胃粘膜の萎縮を反映する「血清ペプシノゲン値」を調べ、その結果から、胃がんリスクをA~D群+E群の5段階で評価する方法だ(図参照)。
ピロリ菌感染も胃粘膜の萎縮もない人を「A」、ピロリ菌ありで萎縮なし・萎縮軽度は「B」。ピロリ菌と萎縮の両方がありなら「C」、ピロリ菌なしでも萎縮高度なら「D」に相当する。がん化リスクはD・C・Bの順に高い。残る「E」はすでにピロリ菌の除菌治療を受けた人だ。
ABC検診は、胃がんリスク分類の結果により内視鏡検査を受ける対象を絞り込む方法だ。リスク評価で「A(ピロリ菌未感染)」と判定された人は検診対象から除外される。
日本人の胃がんの99%はピロリ菌感染が原因。A群と診断されれば、念のために一度は内視鏡検査を受け胃粘膜の萎縮がないことを確認すれば、胃がんからは一生涯、ほぼ無縁のはずだ。ピロリ菌感染率は世代が下がるごとに減少しており、現在の10代の感染率は10%以下。低リスク対象が増えることで検査対象とともに不利益も最小化され、同時に、危機感が薄れるだろう高リスク群をしっかり囲い込める意味がある。
がん化リスクが高いB~Dは自覚症状があれば定期的な内視鏡検査が推奨される。症状がなく過去に検査歴がない人は、担当医と相談して検査の有無や間隔を決めていく。
問題は「E」だ。ピロリ菌は乳幼児期に感染し、40~50年かけてがん化の素地が完成する。ピロリ菌除菌が成功したとしても、除菌までの感染期間が長く、胃粘膜萎縮が進んでしまっているほど、除菌後も潜在的ながん化リスクは残る。したがってE群もB~Dに準じた対応が望ましい。検査値だけではAに分類されてしまうので、注意が必要だ。