子宮がん
子宮がんのうち子宮頸がんの検診でポピュラーなのが、細胞診検査。これは子宮頸部から採取した組織を顕微鏡で観察し、がん細胞や異型細胞を見つける方法だ。死亡減少効果は実証済みで、しかも効果は大きい。日本では20歳以上を対象に、2年おきの受診が推奨されている。
一方、不利益は少々複雑だ。検診で見つかる前がん病変、とくに中等度程度までの前がん病変の大半は、がんにならないのに治療されてしまうことがある。このため、軽度から中等度の前がん病変は長期の経過観察となる。若い女性には恋愛や結婚の障害にもなりかねず、精神的苦痛は大きい。
また英国のデータを見る限り、明確に死亡率低下効果が示されるのは20代後半以降で、20代前半は利益よりも不利益が上回る(英国の推奨年齢は25歳から)。
子宮頸がんは、性行為を感染ルートとするHPV(ヒトパピローマウイルス)感染が主たる要因。諸外国では、HPV検査で感染の有無を確認したうえで細胞診を行う対象を絞ることや、検診間隔を5年程度開ける検討もなされている。今後の研究課題である。
乳がん
乳がん検診のマンモグラフィは、死亡率を下げる証拠を持つ検診だ。乳がん発症のピークが60代にある米国では50~74歳の検診を推奨、40代は不利益が上回るとして、推奨はされていない。
一方、日本では乳がん発症のピークが40代。検診の推奨年齢は40歳から(上限なし)と諸外国より10年若く設定されている。
ところが、だ。マンモグラフィは乳腺濃度が高い「若い乳房」においては、小さいがんを見逃してしまうリスクが高いという問題がある。X線写真に写った乳腺組織の白い影にがん塊の影が紛れてしまうのだ。
これは乳がん診療現場の常識で、日本女性にとって本当に利益をもたらす検診方法が待ち望まれていた。
昨年11月、東北大学の大内憲明教授らから、マンモグラフィ単独と超音波+マンモグラフィ併用とを比較した研究結果が報告された。
参加者は40~49歳の日本人女性7万2800人。2年間隔でどちらかの検診を受けた。
その結果、マンモグラフィに超音波検査を加えることで、ゼロからI期の超早期乳がんの発見率が1.5倍に上昇することが判明したのだ。
検診と検診の合間に進行する「中間期がん」の減少が期待できる結果といえるが、小さい乳がんには命を脅かさないものが含まれることも指摘されている。
この結果だけで超音波検査の併用の推奨はできず、集団検診として推奨されるか否かは5年、10年先の死亡率低減効果の証明を待つしかないだろう。しかし、任意型検診では不利益を理解したうえで、マンモグラフィと超音波検査の併用を選択肢に入れたい。