【田原】つくるのは難しいんですか?

【三井】キッスのこの浮世絵は、1枚つくるのに96回摺って色を塗り重ねます。少しでもズレたらまた最初からやり直し。絵を描くところから出来上がりまで、6カ月かかりました。

三井エージェンシーインターナショナル代表 三井悠加氏

【田原】96回!? すごいですね。何枚くらい摺るのですか。

【三井】一つの絵柄で限定200枚。たくさん摺ると版木の細かい線がすり減ってクオリティを保てなくなるので枚数を限定しています。通常のものが1枚10万円で、キッスのサイン入りが22万円です。

【田原】いいお値段ですね。

【三井】浮世絵をポスターだと思っていると高く感じられるようですが、一方で浮世絵が絵師・彫師・摺師の総合芸術だと知っている方には、「ファインアートとして売るなら、最低300万円にはしないと」と言われています。今後のブランディングについては検討中です。

【田原】これまでどれくらい売れたんですか。

【三井】発売した時点ですぐ半分が売れました。海外販売用に半分はストックとして残しています。

【田原】ところで、三井さんは東京生まれで、中高一貫校にお入りになった。でも、大学には行かずに専門学校を選ばれた。

【三井】大学に行っても遊んで終わりそうだったので、手に職をつけようと専門学校にしました。

【田原】具体的にどんな学校に行かれたんですか。

【三井】興味があったのは彫金です。ジュエリーのデザインをして、銀を彫って鋳造するところまで教えてくれる学校に2年間通いました。

【田原】ジュエリーづくりはおもしろかったですか?

【三井】はい。1年のときに渋谷パルコのシルバーアクセサリーのショップで店員のアルバイトを始めたのですが、オーナーが「専門学校で学んでいるならデザインをやってみないか」と言ってくださいまして。実際に私がデザインしたアクセサリーが店頭に並びました。デザインしたのは、ゴシックと呼ばれる大きくてごつい感じのアクセサリー。接客中、自分がデザインした製品が売れるのを目の当たりにして、本当にうれしかったですね。