死は平等だが、寿命には貧富の差がある
では、何に意識を向けてお金を投じるべきか。
それは、自分にとっての「本当の幸福」です。先述した「地位財」と対比していえば、「非地位財***」にこそ目を向けるべきなのです。
***非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの(例:休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境など)
以上を踏まえて今回は、体感時間ではなく人生の「物理的な時間」について、どう対処すべきか考えてみましょう。
しばしば「貧富や身分の違いはあっても誰にでも死は平等に訪れる」と言われます。本当でしょうか? 確かに死は平等ですが、寿命(いつ死ぬか)は貧富の差と関連があると僕には感じられます。調べてみると、やはりその通りでした。
スタンフォード大学のChetty Rとハーバード大学のCutler Dらは、収入と寿命の関係について2016年4月に『The Journal of the American Medical Association(略称:JAMA)』(米国医師会雑誌)に発表しました。
Chettyらは1999年から2014年までのアメリカの14億人分の納税記録を収入データとして使い、死亡データは社会保障局の死亡記録を使って収入と寿命の関係について調べました。(参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27063997)
▼収入が多ければ寿命は延びる
膨大な数の調査を分析すると、世帯収入が上がるにつれて寿命が延びていることがわかりました。以前の原稿で、「収入と幸福度の関係」について、ある一定の所得にまで上昇すると「幸福度の上がり方はゼロになる」というノーベル経済学賞受賞者プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授の研究を紹介しました。収入が上がっても幸福度が“停滞”する時期がやってくるのです。(参考:あ然!低所得者と富裕層の「1」はこんなに違うhttp://president.jp/articles/-/21883)
しかし、「収入と寿命の関係」について言えば、世帯収入をパーセンタイル(全体を100として小さいほうから数えて何番目になるのかを示す数値)で取った場合の上位40%にあたる7万4000ドルを超えても、上位20%の11万5000ドルになっても寿命は延び続け、収入階層最上位の200万ドルまで寿命は直線的に延び、頭打ちは生じませんでした(参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4866586/figure/F2/)
男女ともに、収入が高い人は低い人に比べて長寿なのは明らかでした。収入上位1%は下位1%より男性で14.6年長生き、女性で10.1年長生きでした。また、通常女性のほうが男性より寿命は長いものですが、収入が上がるにつれて「男女の余命の差」は縮まっていました。