文在寅大統領の誕生は、5年前から切望されていた
文氏が第19代大統領に就任した背景には、一縷の望みをかけた三放世代の熱烈な応援がある。
文氏は既成の権威的勢力や前政権を鋭く批判するとともに、三放世代にも焦点を当てた政策を掲げた。若者の期待は、20代の投票率が71%と、前回よりも6ポイント上昇していることにも表れている。
地域ごとの得票率で文氏が負けた大邱は伝統的に保守政党が強く、下馬評を覆すことはできなかったものの、その大邱においても文氏の人気はすさまじかった。選挙演説には街の広場を埋め尽くすほどの若者が集結し、声援を送っていた。
実は、この人気は今に始まったことではない。2012年の大統領選において、得票数こそ朴槿恵氏が勝っているものの、文氏は20代、30代で65%以上、40代においても55%以上の支持を獲得していた。すでに若者は明確に文氏への支持を表明していたのだ。
悔しくも負けた若者が見たものは、汚職にまみれた大統領の姿であり、韓国憲政史上初の大統領罷免という最悪の幕切れだ。若者は今回の選挙を通じ、上の世代に前政権を選択した誤りを認めさせることになった。
ただ、文氏の勝利は若者だけに支えられたわけではない。朴政権のスキャンダルは国民の心に大きな傷を残したが、そのなかには朴前大統領を支援してきた大多数の50代以上の世代も含まれる。その点では、今回の選挙はすべての韓国国民にとって、痛みを感じながらの投票だったといえる。
来年の冬にオリンピックが開催される平昌(ピョンチャン)周辺の町でインタビューした50代の男性は「これまで特定の保守政党にしか投票してこなかったが、今回初めて別の政党の候補に投票した。文氏には投票しないが、我々は変化しなければならない」とうつむき、落胆の声を漏らした。
大邱のタクシー運転手の男性は、崔順実(チェスンシル)氏が黒幕であり、朴前大統領は利用されただけだと考えているようであった。彼に、文氏を支持する若者についてどう考えるかと質問すると、文氏と、文氏を支持する若者への嫌悪感を露わにした。
「彼らは戦争を知らない。北朝鮮との融和政策を進めるなんておとぎ話を信じているとしか思えない」