伝統と経済状況が、若者を恋愛から遠ざける
「韓国の状況はわかった。しかし、恋愛するのは自由じゃないのか」。そう考える人もいるだろう。
しかし、ある20代の韓国人女性は、恋人がいるにもかかわらず結婚したくないという。その理由を聞くと「家族を失いたくないから」と当然のように答えた。これはどういうことか。
韓国において、結婚をした女性は「出嫁外人」と呼ばれ、文字通り“嫁に出た外の人”として家族から扱われることが当然とされた。結婚を機に元の家族から切り離され、夫の家に入るという意識は、日本以上に強かったのだ。
そのような、いってみれば旧時代の意識を、若者が共有することは難しい。
韓国では旧正月と、日本の盆に当たる「秋夕(チュソク)」が重要な家族行事とされる。一族が集まり食卓を共にするこれらの行事において、料理やもてなしをするのは嫁や女性の役割だとされてきた。しかし、最近の若者はこのような伝統をいぶかしく感じている。
男性についても、世代間の常識の違いが大きな溝をつくる。結婚した男性は新居を構えることがしきたりだった。しかし、経済成長に伴う地価の上昇により、マイホームはこれまで以上に難しい夢となっている。
日本においても、似たような状況があると考える人もいるだろう。しかし、韓国は一層深刻だ。
結婚したいが、家は買えない。その状況に直面した男性は、新婦の両親に対しての後ろめたさを感じるだけでなく、自らのプライドも深く傷つけることになる。それを避けるために、結婚、そしてその前提となる恋愛にさえもブレーキをかけてしまうのだ。