膵がんの10年生存率は4.9%。今回公表されたがん種のなかで唯一、1割を切った。ただ2年、3年を目安としてきた膵がんで10年生存率が報告されたこと自体が画期的といえる。
膵がん切除術は侵襲が大きく高難度の手術だ。日本肝胆膵外科学会は、年間一定数以上の高難度手術を実施している施設を修練施設とし、そこで経験を積んだ医師を「高度技能専門医」と認定。安全性の向上に努めている。
安全性が高まることで、術前に抗がん剤を投与し、がんを小さくしてから切る「術前化学療法」の可能性も開けてきた。
「告知を受けた患者さんにはこう話すようにしています。手術が受けられるなら頑張って手術を受けましょう。そして無事に退院することを目指しましょう。病理検査で病期がわかったら、再発予防のための抗がん剤をやるかどうかを検討しましょう。それから3、4カ月に1回、2年間はCT検査でフォローしましょう――。一人ひとりの患者さんにとっては非常に長い道のりです。その積み重ねが5年、10年につながっていく」(島田氏)
膵がんは難治がん。だが合併症を減らす努力を続ける医療者と患者の思いが、一歩ずつ医療を進化させている。
国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター長。1961年生まれ。86年横浜市立大学医学部卒業。2012年より現職。
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院副院長(診療担当)・肝胆膵外科長。1956年東京都生まれ。京都府立医科大学卒業。