がんはもう不治の病ではなく、2人に1人がかかる国民病。しかも10年後の生存率は6割に迫る。そんな時代のがん検診、がん治療を紹介しよう。
がんは「慢性疾患」不治の病ではない!
全がんの全病期(I~IV期)をまとめた10年生存率は58.2%。2016年1月、国立がん研究センターなど専門施設で組織する「全国がん(成人病)センター協議会」から、がんの10年生存率が公表された。追跡対象者が診断・治療を受けた時期は今から15年近く前の1999~2002年で、がん医療が進歩した現在なら、さらに長期の生存が見込めると思われる。
ところが、14年11月に内閣府が行った「がん対策に関する世論調査」では、全がんの5年生存率がすでに50%を超えていることすら、4人に3人が知らなかった。
「いまだに『がん=不治の病』というイメージが根強いのだな、と驚きましたね。しかも現代人の2人に1人ががんを発症すると知っているのは、回答者の4分の1でした」
国立がん研究センターがん対策情報センター長の若尾文彦氏は、今回のデータ公表で「がんは非常に珍しい、致命的な病気」という誤った認識が変わることを期待している。本人や周囲の誤解が、がん検診の忌避や診断後の社会生活に悪影響しかねないからだ。
事実、がんと診断された後に退職に追い込まれた例や、早まって「治療に専念するために仕事を辞めてきた」という例は後を絶たない。
しかし、今回明らかになったように、がんの多くは早期診断と適切な治療によって10年以上の生存が期待できる、いわば「慢性疾患」だ。
死亡者数が多い5大がん(胃・肺・大腸・肝・乳)のうち、乳がんの10年生存率は80.4%、大腸がんは69.8%に達する。III期の進行がんでも53.8%(乳がん)、69.6%(大腸がん)と比較的高く、I期の早期発見なら、ともに9割以上が治る公算だ。がん発症以降の人生は予想外に長い。