求められるのは組織の代表としての対応
さて、「入都式」の話に戻ります。大勢の若者を前に式辞を述べましたが、みなさん判で押したように黒い服ばかりでした。就活の際も、そうでした。「周囲から浮かないように」「公務員だから」という思いでしょう。
しかし、担当部署にもよりますが、私は、都民が不快に思わない限り、職員が“個性”を発揮してよいと思っています。もっとも、参議院議員としての初登院に、緑色のジャケットと豹柄のスカートという“サファリルック”で臨み、危うく懲罰委員会にかけられかけた私の考えで、近頃の保守的な若者は受け入れないでしょうが。
まずは、「最初から飛ばさず、時期を見て徐々に個性を発揮しろ」ということです。なにも最初から自分でハードルを上げる必要はありません。
社会人としてのマナーについて、まず新入職員にお願いしたいのは、電話対応などでの言葉遣いです。
都職員、あるいは会社の一員となったからには、電話に出た瞬間に、その組織の代表になります。そんなとき、「ただいま、部長はいらっしゃいません」などといった言葉遣いをすれば、その組織全体の常識が疑われます。問い合わせであれ、苦情であれ、励ましの電話であれ、きちんとした言葉で対応してもらいたい。要は敬語、言葉をしっかり意識して使ってほしいということです。
私はアラビア語の通訳者、テレビキャスターを経て政治の世界に入りました。一般企業に新入社員として入った経験はありません。あえて、その道を選びましたから。
ただ、「入都式」に並ぶ若い方々をみて羨ましく思うのは、入社同期がいるということです。切磋琢磨し、逆境にあっては励ましあえるのです。半面、群れになってしまう危険性もある。一人一人が高い志を持ち、東京を、そして日本をつくりあげていってほしいです。
彼らはいわゆるデジタルネーティブ世代。コンピュータがあるのが当たり前の世に生まれ育ってきました。そんな彼らだからこその発想、着眼点などを、どんどん出してもらいたいですね。
彼らが入都20年を迎えたとき、日本がどのような姿になっているのか、私はとても楽しみです。
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。