麺を「仕入れ」から「自家製造」に変えた理由

ラーメンとスープ開発の裏話も紹介しよう。2回目の記事でも触れたが、スガキヤラーメンのスープは「魚介ベースのとんこつ味」で、味噌煮込みうどんなど濃い味が特徴的な名古屋では異色の味だ。

「開発時、近隣のラーメン店ではとんこつ味や鶏ベースの味もあったそうで、差別化を考えてこの味となりました。当時は『ちょっと変わった味』だと言われました」(菅木氏)

麺の製造を担う関連会社「寿がきや食品」本社工場。

地元で育った人は「都市伝説」として知っているが、「スガキヤのラーメンは原料に蛇を使っているのではないか」との噂が立ち、“ヘビラーメン”とも言われた。店で提供する場合は「粉末」を使うのだが、この粉末も噂に拍車をかけたのかもしれない。滋養強壮によさそうだが、もちろんそんなことはない。

「あの粉末の正体は魚の節(ぶし)なのです。鰹節(かつおぶし)のように、数種類の魚と昆布からとったダシのパックです。スガキヤの各店舗ではこの節を入れて煮込み、別に温めた自家製とんこつスープを合わせて作っています。麺類はすべて500円未満の低価格ですが、店で手間はかけているのです」と菅木氏は明かす。

スープが自家製なら、麺はどうだろう。実はこれも内製化が進み、グループ企業が製造を担っている。かつては取引先から仕入れていたが、次のことがきっかけで方向転換した。

「ある日、創業者が麺の重量を計測したら、約束した量よりも少なかったのです。お客様への信頼も損ねるし、商道徳的にも許せない。じゃあ、自分のところで製造しようと決意し、それ以降は試行錯誤しながら自家製の麺づくりに取り組むようになりました」(菅木氏)

現在は、店舗で取り扱う麺の全量が自社工場だ。こうした麺の内製化もスケールメリットが働きコストダウンとなり、低価格のラーメンにつながっている。