2006年に撤退して以来、首都圏に店舗がない「スガキヤ」だが、静岡県から兵庫県まで332店(2017年4月現在)を展開し、特に愛知県では圧倒的な存在感を持つ。この店舗数を全国展開する大手飲食店で比較すると、ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」や、喫茶店の「珈琲館」よりも多い。
スガキヤの店で特徴的なのは、ラーメン以外に甘味メニューも揃えていることだ。特に現在は夏メニューに切り替わり、定番のソフトクリーム(150円、ミニソフトは100円。価格はいずれも税込み)やクリームぜんざい(230円)などの他、牛乳寒天(190円)、コーヒーゼリー(210円)、キャラメルクリーム(230円)、いちご氷(190円)、ラムネ氷(190円)といった低価格の甘味が充実している。
なぜ、ラーメン店なのに甘味に力を入れるのだろうか。
全売り上げの1割、夏季は2割が「甘味」
「もともと当店は、戦後まもない1946年に甘味メニューの店で開業しました。まだ終戦直後の混乱期で、人々は甘いものを欲していた時代です。当時は店名もなく"甘党の店"と呼ばれていました。2年後、ラーメンがメニューに加わり、店名を『寿がきや』(当時)と名づけた。ラーメンを始めたのは、開業当時、近くに荷物を置いてラーメンを食べてから来るお客さまが多かったためです。それならウチの店でもやろう、と始めたそうです」
スガキヤを運営するスガキコシステムズ取締役の菅木寿一氏はこう説明する。そうした経緯により、ラーメンチェーン店では珍しく、甘味メニューが揃う店となった。
現在は、全売上高の約1割(夏季は約2割)を「甘味」が占めるが、売り上げ規模の大小ではなく、同社にとって甘味は欠かせない存在だという。
「昭和時代、各地のスーパーの店舗内に積極出店できたのも、甘味が武器となりました。お昼時にはラーメンの注文が多く、午後はソフトクリームの注文が増える。時間帯に関わらず、買い物の後に立ち寄りやすい店として、お客さまの支持を受けたのです」(菅木氏)
子供連れで買い物に来たお母さんが時にはラーメンを食べ、時にはソフトクリームを頼む。親と一緒に食べた子供も、ラーメンやソフトクリームの味を覚えて育つ……という流れで、スガキヤは名古屋人のソウルフードとなっていった。
ちなみに取材時に本社に飾られていたマスコットキャラクター「スーちゃん」人形も、右手でラーメン、左手でソフトクリームを持っていた。やはり麺類と甘味は2本柱なのだ。