名古屋が本拠地の「スガキヤ」は、どこのラーメン店にもある餃子や炒飯のような定番メニューがない。一方で低価格の甘味メニューは充実している。それもまたスガキヤの戦略だった――。

愛知県を中心に、静岡県から兵庫県まで約330店を展開する「スガキヤ」は、少し引いた視点で考えると不思議なラーメン店だ。ラーメン以外に低価格の甘味が充実する一方で、競合ラーメン店には必ずある餃子や炒飯といった定番メニューがない。

なぜラーメン店なのに、これらの定番メニューがないのだろうか。

子供も大人も“おやつ感覚”で楽しむ

スガキヤを運営するスガキコシステムズ社長の菅木伸一氏は、「ウチはラーメン屋というよりもヌードル屋だ」と言う。その真意を、伸一氏の子息で取締役の寿一氏が次のように説明する。

「スガキヤのラーメンは『お客様が小腹を満たすおやつやスナック感覚で利用されている』という意味です。そもそも、一般的なラーメン店で餃子や炒飯と一緒に食べるラーメンとは、イメージにギャップがあると思います。スガキヤのラーメンは、甘味などのデザートやサラダと一緒に楽しまれるお客様も多いのです」

食べ方は人それぞれ。「スガキヤまるごとミニセット」

店内で他のお客の食べ方を見ると、麺類を食べた後にソフトクリームやクリームぜんざいなどを追加で頼む人が目立つ。追加で頼むのは、ラーメンを食べる間にソフトクリームが溶けてしまうからだ。もちろん食べ方は人それぞれで、「スガキヤまるごとミニセット」(ハーフサイズのラーメン+同サイズの五目ごはん+カップソフトクリーム+サラダがつく。590円=以下、価格は税込み)を頼み、一緒に楽しむ人もいる。店では、セットでも食後にソフトを食べたい人にはチケットを渡し、後で現物と交換するそうだ。ソフトクリームで甘くなった口の中を、残ったラーメンスープを飲んで“中和”させる人もいる。

一般的なラーメン店のお客が「ラーメン+餃子」や「ラーメン+炒飯」を楽しむのに対して、スガキヤのお客に「ラーメン+甘味」が多いのは、もともと終戦直後に“甘党の店”として開業し、2年後にラーメンがメニューに加わった生い立ちが関係している(「“シロノワール“の源流はスガキヤにあった」http://president.jp/articles/-/22158 参照)。ラーメン店として創業したのではなく、甘味の店がラーメンを扱うようになったので、一般的なラーメン店とは立ち位置が違うのだ。

商品は庶民価格で、今でも単品の全メニューがワンコイン(500円玉)でお釣りがくる。セットメニューで食事をとる人もいるが、使われ方は“おやつ感覚”だ。低価格なので、中学生や高校生が学校や部活の帰りに利用することも多く、大人もラーメンや甘味を食べに気軽に立ち寄る――といった利用のされ方だ。