スガキヤとコメダの「ソフト」な関係
スガキヤとともに、名古屋人のソウルフードといえる店が「コメダ珈琲店」だ。コメダの創業は1968年とスガキヤより20年以上後だが、近年の店舗拡大スピードは速く、国内で750店を超えた。間もなく47都道府県すべてに出店する勢いを示す。
そんなコメダの看板デザートが「シロノワール」。温かいデニッシュパンの上にソフトクリームとチェリーが載った商品だ。昨年、なぜシロノワールが開発されたのかを、コメダの創業者・加藤太郎氏(現・珈栄舎社長)に聞いた。答えは、「当時、知られつつあったデニッシュパンを使ったメニューを出すことで、他の店と差別化をしたかった」だった。
シロノワールだけでなく、コメダのドリンクは「クリームソーダ」「クリームコーヒー」「クリームオーレ」「アイス・ド・ティーフロート」「アイスココア」と、いずれもソフトクリームが載っている。競合店のドリンクはアイスクリームが多いのに、なぜソフトクリームにしたのかも加藤氏に聞いたところ、「だって、新鮮なソフトクリームのほうが、アイスクリームディッシャーで載せるアイスよりもおいしいでしょう」という答えが返ってきた。
これを受けて、筆者が「名古屋人にとってソフトクリームはソウルフードであり、それはスガキヤの功績だと思うが」と話したところ、加藤氏はこう反応した。
「ああ、スガキヤか。それはあったかもしれないですね。実は、私はコメダを創業する前の学生時代、ビルの地下2階の『陣屋』というステーキ店でアルバイトをしていたのですが、その店の斜め前にスガキヤがあり、ソフトクリームを出していました。言われてみると、その深層心理が脳裏にあり、ソフトクリームの導入につながったかもしれません。まったくゼロからの発想というのは、なかなか出てこないですから」
コメダのメニューも、スガキヤのソフトに影響を受けていたのだ。両社が相乗効果となった結果、名古屋地区における飲食店のソフトクリームは、他の地域よりも身近な商品になっていった。