資金わずか220万円からのスタート

鶴巻はたった1人でも開発を続けようと決意、2013年にFOMMを設立した。前述のエンジェル投資家の出資話はまだ生きており、それを当てにしていた。

会社の登記が完了し、お祝い代わりにひとりでひっそりと大好きなカラオケスナックで飲んでいるとき、エンジェル投資家から「やっぱり出せない」と電話が入った。どうやら、事業に不安を感じたらしく、鶴巻はなすすべを失った。その後、2カ月は地獄の日々が続いた。

「仕方がなく、妻に頭を下げてトヨタ車体の退職金の一部を使わせてもらいました」

その退職金を含めた自己資金と、友人2人の出資額を合わせてたった220万円。これで、自動車を開発しようというのだから無謀だったろう。

しかし、それでも続けると腹をくくると、救世主が現れた。バイク用チェーンや自動車エンジン用チェーンメーカーとして知られる大同工業が出資し、社員2人も派遣してくれるという。鶴巻は小躍りして喜んだ。

この出資金を元に開発をスタート、途中でスパークプラグや自動車用センサを作っている日本特殊陶業や、横浜キャピタル、TNPオンザロードの出資もあり、約9カ月で試作1号車が完成し、2014年に記者発表を行った。その後も勢いは増し、バンコクモーターショーへ出展、タイでの認知度も徐々に上がり、試作4号車でほぼ完成に近づいた。

東南アジアや中国で、Concept Oneが走る勇姿をもう少しで見ることができる。ぜひ、日本国内でも走れるように法制度の整備を進めてほしいものだ。

(文中敬称略)

株式会社FOMM
●代表者:鶴巻日出夫
●創業:2013年
●業種:小型電気自動車開発、部品開発など
●従業員:16名
●年商:非公開
●本社:神奈川県川崎市
●ホームページ:http://fomm.co.jp/wordpress/
(FOMM、日本能率協会=写真提供)
関連記事
京大発ベンチャーEV量産! なぜ幻のスポーツカーが蘇ったか
シンガポールが日系企業にラブコールを送る理由
自動運転車が渋滞と駐車場をなくす理由
博報堂もGoogleもやめて起業した理由~freee佐々木大輔氏
トヨタ+スズキ提携で販売台数1800万超、異次元の自動車戦争に突入