エコカー以外の付加価値はあるのか
ただ、新型プリウスにも死角がないわけではない。ひとつはプリウス=エコカーの代名詞という、トヨタが築いたブランドイメージに自ら縛られてしまい、エコカーであること以外の付加価値が薄いこと。
たとえば動力性能。大電力を出せる大型バッテリーを積んでいるのだから、ハイブリッド出力をノーマルプリウスよりも高くして、走りの良さをドライバーに感じさせることはまったく難しいことではない。だが、トヨタはあくまでノーマルプリウスと同じ数値に収めた。
先に新型プリウスのドライバビリティについて良好と書いたが、EV走行能力が増したこと以外についてはほとんどノーインプレッションで、ごく普通の車という域を脱するものではなかったのも事実。エコという枠を取り払ってみると、この程度のドライビングプレジャーで400万円は高いと感じたのも正直なところだ。
関係者によれば、重量増になってもJC08モード燃費でノーマルプリウスを下回ることは許されないという方針から、パワー側にリソースを振り向ける余裕がなかったということらしい。せっかくいろいろな部分を変えたのに、エコを商品作りの最上位に置くという点については旧型プリウスPHVとポリシーがまったく変わっていないのだ。いっそ、プリウス一族からPHEVを切り離してしまったほうが、エコとその他の要素のバランスが取れたPHEVを自由に作れた可能性もある。
もうひとつ気になるのはサービス。新型プリウスPHVはハードウェアの面ではバッテリー容量を8.8kWhに増やし、急速充電にも対応するなど、EVライフを部分的に楽しめる仕様になっている。しかし、インフラ側がそれを顧客に楽しませるようになっていない。
トヨタは旧型プリウスPHVの発売をきっかけに、全国の販売店に普通充電器を約4200基設置した。だが、EVをほとんど手がけてこなかったこともあって、急速充電器については数基しか設置していない。新型プリウスPHEVは急速充電に対応しているのだが、今後の展開については「お客様のご要望をきいてから検討する」(トヨタ関係者)という段階にとどまっている。