単純な足し算から新たな価値は生まれない

慶應義塾大学の特別招聘教授として教壇にも立つ夏野剛氏。NTTドコモで「iモード」を立ち上げた主要メンバーであることを知る人は多いだろう。その後ドワンゴに籍を移してからは、自らを“黒字化担当”と称し、伸び悩むニコニコ動画の改革に辣腕をふるった。同社を含め現在は複数の企業の取締役を兼任、実業家として多彩な活躍を見せる夏野氏のすべての仕事の基本にあるのは“社会への新たな価値の提供”だ。

夏野剛(なつの・たけし)
慶應義塾大学
政策・メディア研究科特別招聘教授
早稲田大学政治経済学部卒業。米ペンシルベニア大学経営大学院ウォートンスクール卒業(経営学修士)。東京ガス、NTTドコモなどに在籍。現在、複数の企業の取締役を務める。

「ビジネスである以上、利益も大事ですがそれが目的ではつまらない。何らかの形で社会の発展に貢献してこそやりがいを感じるし、それがないビジネスというのは結局淘汰されてしまうでしょう。では、どうしたらそういう新しい価値を生み出せるのか。僕は、明確な意思、信念こそが欠かせないと思っています。今回運転させてもらったアウトランダーPHEVには、それがしっかり宿っていると感じました」

2013年に発売され、“世界で最も売れたプラグインハイブリッド”(※1)の実績を持つアウトランダーPHEV。三菱自動車の象徴でもある4WDのSUVと、同社が50年以上にわたり培ってきたというEV(電気自動車)技術を融合したこのクルマのどこに夏野氏は“意思”を感じたのだろうか。

「EVがあくまでベースで、ガソリンエンジンの役割は充電低下時や高速走行時にそれをフォローする──。4WDのSUVでこのコンセプトを実現したというのがまずすばらしい。実際、街中を走っている分にはエンジンがかかることはほとんどなく、静かで滑らか、心地よいドライビングを存分に楽しめます。乗る立場からすればとてもうれしいことですが、きっとプロジェクトマネージャーの方は相当苦労されただろうと想像します。SUVにしても、EVにしても、三菱自動車には長年蓄積技術があるわけで、技術者にはそれぞれ思い入れもあるに違いない。でも、それを単純に足し算しても中途半端なものになってしまい、決して新しい価値は生まれません。そこで、固定観念を打ち破る強い意思が必要になるわけです」

“顧客が求めるもの”と真摯に向き合っている

「目線が高く、視界も広いため、見通しがよくとても運転しやすい」と夏野氏。

度重なる試作と厳しい議論の末、世界で初めて4WDのプラグインハイブリッドSUVとして登場したアウトランダーPHEV。その開発において技術者らが目指したのは、「これまで誰も乗ったことがないクルマ」であり、「乗る人の人生を豊かにするクルマ」だった。

「異なる価値を融合するにあたっては、明確な意思が必要と言いましたが、もう一つ忘れてはならないのが“それを本当に顧客が求めているか”という視点。基本的なことではありますが、案外、新製品、新サービスの開発現場では、忘れられがちです。でも、対価を払う人を置き去りにした開発というものは本来あり得ません。ユーザー一人一人に満足を提供することの積み重ねが、最初にお話しした社会への貢献にもつながるのです。その点アウトランダーPHEVは“いつでも、どこでも快適に走りたい”というドライバーの純粋なニーズと真摯に向き合っていることがよくわかる。三菱自動車独自の強みを組み合わせて、しっかり“第3の価値”を生み出しています。僕自身の感想としては、EV技術を使い、SUVを街中でも一段と気持ちよく走れるようにしてくれたのがこのクルマ。ファミリー層にもぴったりですね」

自宅やショッピングセンター、サービスエリアなどで手軽に充電できる。普通充電(AC200V/15A)の場合、約4時間で満充電に。
ラゲッジルームなどにAC100Vコンセントを設置。家庭で使っている電気製品をクルマで利用することができると好評。
 

前・後輪それぞれに独立して搭載された高出力モーターがもたらす新次元の走りが高い評価を受ける一方、駆動用バッテリーから電力を取り出せるAC100Vコンセントが「アウトドアの世界を広げてくれる」と評判を呼ぶ。そんなアウトランダーPHEVは、発売以来改良を重ね、使い勝手に磨きをかけ続けている。例えば、エンジンを始動させずに走り続けることができる「EVプライオリティモード」(※2)を搭載したり、周辺の歩行者や車両を検知する機能を強化したり──。“顧客が本当に求めるもの”を追求しているわけだ。

「クルマというものは、ある種所有する人のライフタイルを象徴する存在です。その意味ではアウトランダーPHEVも、環境への意識が高かったり、先進性を大切にしたり、インテリジェンスを持ち合わせた人に選ばれる一台だろうと思いますね。いずれにしても、乗ればほかのクルマとの違いがよくわかる。一度、試してみることをお勧めします」
プラグインハイブリッド、4WD、SUV──乗る人それぞれに新たな価値を提供するアウトランダーPHEV。シートに腰を下ろし、アクセルを踏めば、きっとあなたもこれまでにない走り、そして楽しみを体感することができるに違いない。

アウトランダーPHEV S Edition
全長×全幅×全高:4695×1800×1710mm
車両重量:1900kg/乗車定員:5名
燃料消費率JC08モード(国土交通省審査値)ハイブリッド燃料消費率:19.2km/L
充電電力使用時走行距離(プラグインレンジ、国土交通省審査値):60.2km
車両本体価格(消費税込):4,789,260円
 

(※1)「EVsales」2015年データより。
(※2)EVプライオリティモード選択時でも条件によってはエンジンが始動する場合がある。