CO2排出による地球温暖化を抑制するため、世界の自動車メーカーは次世代モデルの開発にしのぎを削っている。そのなかにあってBMWが投入したPHEV(プラグイン・ハイブリッド)は、環境性能だけでなく、駆けぬける歓びを両立させてくれる車として注目を集めている。その開発ストーリーの背後には、BMWがもつサステナブルな哲学がしっかりと生きている。
BMW 530e iPerformance
今年、フルモデルチェンジした5シリーズの最新モデル。全世界でこれまでに約800万台が販売され、最も成功しているビジネス・セダンと呼ばれている。最先端テクノロジーを余すことなく取り入れることで、部分自動運転を可能にした革新的な運転支援システムを実現した。

走る歓びと環境性能の両立

BMWが開発した電動化技術「eDrive」への注目が高まっている。高出力電気モーターと効率の高いリチウムイオン電池バッテリーをキーテクノロジーとする同社の電動化技術。そこにはCO2削減や大都市の大気汚染対策といった環境保護・エネルギー削減志向だけでなく、従来からある「走る歓び」を毀損しないという大きな特徴がある。

BMWはこれまでBMWiブランドから市販化した電気自動車で成功をおさめ、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)「iPerformance」を市場に展開してきた。

X5 xDrive40e iPerformance、225xe iPerformance、330e iPerformance、740e iPerformanceといった多様なラインアップがそろうなかで、2017年にはフルモデルチェンジした5シリーズの最新モデルとして530e iPerformanceを投入。サステナビリティと、わくわくするような魅惑の走りを両立させた。

90年代からサステナビリティを考えてきたBMW

その背景に何があったのか。ここを押さえることは、未来志向でモビリティを考える知性をもったビジネスマンにとって、不可欠といえるだろう。

そこで、自動車ジャーナリズムの先端で世界の自動車産業の情勢を伝え、BMWの技術開発やその背後にある哲学や物語にも精通している川端由美さんにお話を伺った。同氏は、環境ジャーナリストとしても活躍している。

川端由美さん。自動車のテクノロジーとエコロジーを中心に寄稿し、経営層へのインタビューも得意とする。BMWについては、経営戦略はもちろん、クルマ作りの背景にあるフィロソフィーを理解し、世界中の工場を見学して技術的なバックグラウンドを知る。

「1990年代の半ばから後半にかけて、BMWではブランドの変革に力を入れていました。このとき、同社が掲げたのが『EfficientDynamics』。自動車の開発製造も含めた効率化の上に、BMWのコアコンピタンスである走りを求めるというものでした。

まだ市場が燃費や効率に対価を払う時代ではなかったこの時代に、BMWではすでにサステナビリティを意識していたのです。現在のPHEVにつながる考え方も、低燃費を実現するという経済効率だけを追及したものではなく、BMW社内のマーケティングやスタッフ部門のコンセプトにいたるまで、すべてを変革するというものでした。企業ですから、当然、利益を出さなければ事業は持続できません。つまり、利益を出しながら、車づくりのコンセプトそのものも変えていった。私は、環境ジャーナリズムの観点から、サステナビリティをこれだけ理解しているBMWに驚きました」

例えばアメリカのサウスカロライナにある工場では、世界中で人気のXモデルの生産を行っているが、この工場はグリーンエネルギーによる生産を行うために、設立時にも大きな投資をしているという。

「アメリカは電力が安いんですが、この工場では、この地域で得られるメタンガスで発電した電力を利用しています。また工場内の動力にも水素を用いるなど、徹底して環境負荷をかけない工場を建設しています。また、ドイツのライプツィヒの組み立て工場も、100%グリーンエネルギーで運用されています。ここでは日本製のカーボン繊維が使われていますが、カーボンは移動時よりカーボンを焼くときに大量のCO2を発生させます。だからBMWでは、ライプツィヒに運ぶ前に水力発電が盛んなアメリカ・ワシントン州の工場でカーボンを焼いて、CO2を削減しているのです」

完成車の燃費性能だけでなく、自動車を生産すること自体のサステナビリティを徹底して追及する姿勢は、ひとつの哲学だ。それは、工場の設備だけの話ではない。

「南ドイツのランズフートの組み立て工場は、工場自体が古く、設備の変更ができない部分があります。では、どうしているのかというと、この工場では、年齢の高い人や女性が快適に働けるように、働き方のほうを見直しているんですね。設備は変えられなくても、熟練した人たちに長く働いてもらえる工場をつくる。これも、持続可能な車づくりのひとつといえるのではないでしょうか」

BMWの環境コンシャスに喜んで対価を払う顧客

フロアの下にバッテリーを収納するために自動車の設計自体を変えたり、超軽量のサイドパネルを導入したり。驚くべき変革の数々が実践され、BMWの哲学は今、iPerformanceに結実した。

プラグインで気軽に充電し、日常の移動ならその電力だけで燃料補給は不要。ハイブリッドだからガソリンエンジンでの走行も可能だし、遠出のときの心配もない。もちろん、大前提として燃料消費もCO2排出量も少なく、環境にやさしい。

そして、なによりの強みは、BMWならではの走りの歓びがそのまま楽しめるということである。電気モーターを積むことによって低速時のトルクは安定し、一方で急加速が必要なときは、アクセルをフルに踏み込むと、エンジンがかかって瞬時に加速する。上質で力強い走りはいつものBMW。加えて今回のPHEVには、それ以上にオーナーを楽しませる魅力が詰まっている。川端さんは、BMWオーナーの気質をこんなふうに語る。

「BMWには、『BMWが新しいことをやるなら、それを買うよ』という顧客が多いと思いますね。つまり、BMWのイノベーションや先進性が好きで、それを受け入れる人たちです。

iPerfomanceは、環境コンシャスであるということのために日本円にして40万円から50万円のプレミアムが加算されていると思いますが、それを顧客が理解して受け止めている。スポーツタイプのモデルにパッケージを上乗せした場合の抵抗感は少ないでしょうけれど、環境コンシャスにおいても同様の対価を払う顧客がいる。そういう顧客がBMWの顧客ですし、BMWは、徹底してエコをブランド化したともいえるでしょう」

社会的責任のあるビジネスパーソンに選んでほしい

サステナブルな未来に役立つ車に乗ろう。走りもデザインも申し分なく、その上で自動車の生産時点から環境への配慮を徹底する哲学をもったメーカーの車のオーナーになろう。今、そういうことをごく自然に考えるビジネスパーソンが増えているのではないか。川端さんは、そうしたビジネスパーソンたちを、社会的責任のある人と呼んだ。

「社会的に責任ある立場の人、責任を果たすべき人たちに、BMWのPHEVのオーナーになってほしいですね。なぜその車を選んだのか、人から聞かれたときに、その先進的な技術のみならず、技術の背後にあるストーリーをさりげなく語れるくらいのインテリジェンスのある方。そういう方々が新しい技術を使いこなしていくときに、世の中に広くあまねく、技術のすばらしさが伝わっていくのだとも思います」

選ぶなら、そう簡単に語り尽くせぬ魅力をもった1台にしたい。それがこれからの、車選びのひとつの指標なのかもしれない。

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