男性保育士の必要性
保育士の登録数と就業状況を知るには、5年ごとに行われる国勢調査が詳しい。2015年度の調査結果では保育士登録者数は119万人、うち男性保育士は5万人(4%)。さらに就業率に目を向けると、女性保育士は登録数のうち42%、男性保育士は24%にとどまり、フルタイム、パートタイムにかかわらず実働する男性保育士は全国で1万人程度ということになる。男性保育士の就業率が24%に過ぎないのは、賃金や環境などの待遇面に大きな課題があるため、就業しにくく離職しやすいのが原因だ。
だが、たとえごく少数であっても男性保育士が保育の現場へと進出していくことで、実際の保育の様子を見た保護者の側に「男性保育士はいい」と意識の変化も見られている。女性保育士とは異なる切り口からの子供との遊び方や心理的サポートが、子供たちのバランスの取れた心身の成長を促していると感じる保護者も多い。
熊谷氏も同様のツイートをして、男性保育士による保育活動を支持している。
「私も娘と息子が通う保育所に男性保育士が入り、子供たちが楽しそうに遊んでいるのを見て、『家庭の育児で男性の役割があるように、長く保育する保育所でも男性が居る方が幅広い保育が可能』と感じました」
男女共同参画社会基本法 第十条には「国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない」とある。「女の聖域」「男の聖域」という職場意識にメスを入れることが同法の意義でもあった。
女性活躍推進の文脈では、子育て世代の有配偶女性の就業率を上げる意図から待機児童の解消が望まれる。しかし待機児童問題は保育所というハコ自体の不足よりも、待遇や労働条件の悪さを原因とする慢性的な人手不足の方に、より深刻さがある。そのような状況下で男性保育士への逆差別心理が手付かずで残っていることに、熊谷・千葉市長が危機感を覚えたのは十分に理解できることではないだろうか。