これから日本は労働人口の減少という大問題に直面する。テクノロジーを活用した保育園70数園を経営する貞松成氏は「日本の教育過程でチャンスがあるのは未就学の段階だけ。ここを変えれば、人手不足の問題も解消できるはずだ。そのために3つの提言がある」という――。

※本稿は、貞松成『AI保育革命』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

一緒に遊ぶ保育士と園児たち
写真=iStock.com/maroke
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今の保育園児は「100の能力のうち20しか使えていない」

2007年1月に創業した当社は、2020年度で丸13年を迎えました。これまでの過程は必ずしも平坦ではなかったものの、着実に成長を果たし、会社の規模も徐々に大きくなってきました。それでもまだ、私が理想とする保育の実現は道半ばです。

私の夢は、「保育の個別最適化」です。その実現は決して容易ではなくさまざまな施策を講じながら、現在でも「どうすれば実現できるのか」と試行錯誤を続けています。

多くの人は、自分の才能になかなか気づくことができません。社会に出ていろいろな仕事に向き合う中で、「自分にはこれが向いているのかもしれない」などと、徐々に気づいていくのが普通でしょう。

子どもの時期は、それこそ才能の芽が無限に存在しているように感じられます。そのうちどれが開花するのかわからないまま、小学校、中学校、高校と教育を受け続けていくわけです。しかし、それでも社会に出るまでわかりません。

私の性格的な問題もありますが、無駄は好きではありません。「能力が100あるなら100使え」という発想を好んでいるため、子どもが100の能力のうち20しか使えていない現状を問題だと感じてしまいます。そして、それは現状の園児に関する教育に原因があると考えているのです。

子どもたちの能力が2倍になれば、人口問題を解決できる

極端な話ですが、働きたいけど働けていない100万人の雇用を生み出すことができても、社会に与えるインパクトは100万人分に過ぎません。しかし、一方で、もし100万人の子どもの能力を2倍に引き上げることができたら、その影響は200万人分になります。

つまり、より最適な教育を提供することによって子どもたちの能力を2倍3倍へと高めることができれば、結果的に、日本の人口問題を解決することにつながると思うのです。働き手の「数」ではなく、「質」の面からのアプローチです。

ただ、それをどのように実現すればいいのかについては、明確な方法論がありません。10人の子どもがいれば、10とおりの最適な手法があるかもしれません。しかもそれを、教える側も、教えられる本人もわかっていないのです。

保育の現場で長年にわたって働いている人も、そのための解はもっていません。そこで園児が遊んでいるところを観察し、記録をとり、保育園の運営システム「CCS」や保育ロボット「VEVO」など先進的なシステムも導入しながら、現在でも試行錯誤を続けています。