日本の保育政策における3つの提言

次に、保育事業者である私から、現在の日本の保育政策について3つの提言をしたいと思います。提案したい内容は実はたくさんありますが、今回は3つに絞らせていただきました。

1 保育所の利用条件の緩和について

現在、幼稚園にも保育園にも通っていない未就園児数は全国で約14万人と推計されています。

3歳以降の未就園児は、低所得、多子、外国籍など社会経済的に不利な家庭や、発達や健康の問題(早産、先天性疾患)を抱えた子どもに多い傾向があります。

さらに、コロナの影響で地域のつながりや経済が弱くなっている現代社会の中では、保育園がこうした未就園児のセーフティネットとなることは、重要な役割の一つであると考えます。

そのためには、現在の教育無償化に加えて、「親が働くことで通うことができる保育園、親が授業料を払うことで通うことができる幼稚園」といった従来の垣根を越えて、利用条件をなくし、未就学児童(3歳が望ましく、遅くとも世界標準である5歳)への教育を義務化するなどの対策が望ましいと考えます。

日本の公園のカラフルな遊び場と桜の花
写真=iStock.com/Sanga Park
※写真はイメージです
2 保育園の保護者への教育費の徴収について

保育園から小学校へ就学する児童数が、幼稚園から小学校へ就学する児童数を上回りつつある現在(令和元年版『少子化社会対策白書』p.68 内閣府)において、保育園は幼稚園同様に就学支援の役割が求められています。

しかし、幼稚園とは違い、保育園が教材を要する授業を提供したとしても、児童福祉の観点から保護者から教材費を徴収することは原則として認められておらず、教育環境に差が生じます。

したがって、民間保育事業者に利用者への教材費徴収の裁量権を与えることで、就学に向けた保育園教育に特色が生まれ、公立と民間、さらには民間保育事業者間の棲み分けが整理されていくものと考えます。