保育士不足で保育園がふやせない
待機児童の多い都市部では、認可保育園の整備が急ピッチで進められていますが、そこに立ちはだかっているのが、保育士不足です。保育士が採用できないために、開園が遅れる園もあります。すでに開園している園でも、保育士がやめて保育が継続できなくなり、行政が支援するケースもありました。
一方、保育士資格をもっていても保育士として働かず、現場から離れている「潜在保育士」は68万人(2011年)にものぼります。いったいこの保育士不足の背景には何があるのでしょうか。
根本的な問題は明らか
すでに言われているように、保育士の待遇が低いことが保育士不足の根本的な問題です。民営保育所の保育士の平均給与は約21万円とされていますが、これは全職種平均の約30万円を9万円も下回っています。潜在保育士への調査では、保育士としての就業を希望しない理由のトップは、「賃金が希望と合わない」でした(グラフ参照)。
認可保育園等の運営費の大半は公費で賄われているので、国や自治体の保育にかける予算を大幅にふやして保育士のお給料を上げることがいちばん重要と思われるのですが、ここ数年、安倍首相お膝元の行政改革等を進める会議からは、保育士の配置基準や資格要件の緩和など、むしろ「もっと安く雇おう」とする提案が相次ぎ、そのたびに大議論になりました。そうこうするうちに、保育士不足はますます深刻化しています。
子育て環境が悪化する中、保育士に求められる専門性は幅広くなっています。安全・衛生などの基本的な事柄から、子どもの人格形成期にふさわしい教育、多様化する子どもの発達への支援、保護者支援、貧困や児童虐待懸念などの福祉的ニーズへの対応などなど、資格取得時に求められる知識や技術を、経験によってさらに広げ高度化していく必要に迫られているのです。
このような保育士に求められる専門性が、政府や一般社会に十分に理解されていないことが、問題の根源にあります。