私も半世紀以上北新地で接客していますので、20代のころから来店してくださっているお客様が出世されるなど、男性の成功する姿を多く見てきました。偉くなられる方は、はじめから輝くものを持っていらっしゃいます。出世されるタイプの人は、爽やかで嫌みなところがありません。きっと男の目から見ても、惚れ惚れするのではないでしょうか。

「クラブ山名」オーナーママ 山名和枝(やまな・かずえ)
北新地歴56年で、老舗高級クラブ「クラブ山名」のオーナーママ。北新地社交料飲協会副理事長。北新地で受け継がれてきた接客時の心得「ホステス心得帖」の復刊にも尽力。

ものごとに動じず、「この人にならついていきたい」「この人のためならひと肌脱ごう」と部下や周りから慕われている人が多い気がします。もっといえば、人としての魅力にあふれていて、その魅力に人が吸い寄せられ、人に恵まれることで成功を収めていくのでしょう。

伸びる人は接待の仕方、部下や店のスタッフへの振る舞い方の点でも違います。つまらないことを言わないし、言動にも気遣いがあふれています。どんな人ともコミュニケーションをはかる能力に優れています。

好き嫌いを態度に出さず、どの女の子にも気持ちよく接してくださる。ご自身が接待をされるときにも、いろいろな子が自分の席でいいサービスをしてくれたほうが助かるのはわかっているからでしょう。ボーイなど店のスタッフに対しても分け隔てなくよくしてくださいます。

できる男の人は酒を飲んでも、決して酒に飲まれません。酒を飲んでいない普段の状態のときにどんなに紳士的でステキな人でも、お酒を飲んで豹変するような方は、人の上には立てないでしょう。お酒を飲んで大騒ぎをしたり、他のお客様の迷惑になることをしたりするのは、店にとって本当に困ったことです。クラブは社交の場ですから、「お酒の上のことだから」などという言い訳はありえないことですね。お酒の飲み方にも品性があらわれるものです。

お酒を飲んで人の悪口を言ったり、愚痴をこぼしたりするのも避けるべきです。お酒の席では、日ごろの愚痴が口をついて出てきてしまうものですが、やはり表の顔を見せるのがクラブです。よそいきの顔をしながらどれだけ面白く遊べるかも、男の器量のひとつなのです。こういう店で素を出すべきではありません。それができない人は、野暮だと言われてしまいます。当店にいらっしゃる方には、愚痴や悪口を言われるような方はまずいらっしゃいませんね。

ただ、クラブでは冗談めいた多少の愚痴や、その場をなごませるエピソードならば、ストレス解消のご愛嬌ともいえるでしょう。遊び慣れている方は、ラウンジやスナックへ行かれたときに、裏の、自然体の自分サイズで遊ばれる方が多いのではないでしょうか。