求められるのは担い手業種の働き方改革
そもそも日本においてサービス業が産業の中心となるなか、土日が休日という人は減少している。一説によると、すでに都心部では、土日が休みの人とそうではない人との割合が半々になってきているとも言われる。現場の声を聞くと、プレミアムフライデー企画者は本当に担い手業種における現場の実情が見えているのだろうかと疑問を呈したくなる。
プレミアムフライデーの担い手業種となる小売、飲食等は、統計的に見ると、労働生産性が低く、平均年収も低い業種となっている。これらの業種で今必要なのは、会社のために売上を増やすことではなく、従業員のために資本装備率や労働生産性を引き上げ、給与を引き上げ、休日を増やしていくことではないだろうか。
飲食業界では、24時間営業の見直しなど、従業員対策が本格的に始まっている。すかいらーくが深夜営業しているガスト、ジョナサン約1000店舗のうち、約750店舗を原則深夜2時閉店、早朝7時開店に切り替えるなど、従業員により配慮していこうという動きのほうが活発化しているのだ。
今回のプレミアムフライデーは、本当に従業員側の働き方改革に貢献するものなのか、はたまた「モーレツ・一律・押し付け」のように感じる従業員はいないのか。生活スタイルや人の価値観多様化を受け入れること、企業側が賃金を上げていくことに努力すること、特に担い手業界などにおいてもっと休みを取れるようにしていくこと――これらのより優先順位が高い施策をカバーした上で、消費喚起対策のプレミアムフライデーが定着していくことを期待したい。
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。著書に『ミッションの経営学』など多数。