「考える力」が劣化していく理由

仕事をさばいているだけでは、見えないところで「考える力」がどんどん劣化していく。残念ながら、そういう会社が昨今の日本にものすごく多くなってしまいました。日本企業90年代と2000年代の10年間、“失われた20年”と呼ばれる厳しい時代を体験しました。そのなかでは、まずは生き残るために目の前の数字を上げることに集中するしかなかったことも確かでしょう。

ようやく、そこから脱出しかけているとはいえ、かつて成功したビジネスモデルが復活することはありえません。液晶事業で大成功したシャープが、わずか10数年で台湾の企業の軍門に下ってしまいました。あるいは東芝がかつて看板だった家電事業を売却したことが、それを如実に物語っています。過去にどれほど輝かしい業績を上げたビジネスでも、永遠に存続することはできないのです。

しかしながら、まだ日本の経営の現場では旧来型の優秀な人材が評価される風土が残っています。もちろん、その弊害に気づいた会社も少なからずあります。評価自体が変わってきましたし、変わろうとしているのは間違いない。ところが、残念なことに社員のほうが変わりきれず、昔の評価軸でまだ動いている気がしてなりません。

しかし、組織全体の新しいものを生み出す能力が弱ってしまっていたら、新しい発想や着眼、そこから導き出させる戦略も出てくるはずはありません。やがて、組織の基盤が脆弱化していくことになるのです。会社が滅びるというのはそうした理由にほかなりません。そうならないためにも、これまでの働き方を考え直す時期に来ているのです。

柴田昌治(しばた・まさはる)
1986年、日本企業の風土・体質改革を支援するスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。著者に『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『成果を出す会社はどう考え動くのか』『日本起業の組織風土改革』など多数。近著に『「できる人」が会社を滅ぼす』がある。
(構成=岡村繁雄)
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