成長が鈍化し、会社の力も弱体化する

柴田昌治 スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

これまで評価の高い社員というと「仕事が速い」「人よりも高い実績を上げている」「調整能力がある」といったことが当たり前になっていました。つまり、これに当てはまるのが「できる人」というわけです。ですが、その大半は、単に「仕事をさばく」のがうまい人でしかありません。実は、今日のような変化のめまぐるしい社会にあっては、彼らこそが会社をダメにする元凶だといったら、多くの人が驚かれることでしょう。

ここで仕事をさばくとは、上司やクライアントから出された課題を、流れ作業的にそつなく処理していくということ。もちろん、それ自体は悪いことではありません。ただ、そんなことを何気なく繰り返していくところに、ビジネスパーソンが陥りやすいワナが存在します。そこにはまってしまうと、社員1人ひとりの成長が鈍化し、会社の力も弱体化してしまいます。

なぜならその人は「この課題はそもそも何のためにあるのか、一体どんな意味を持つのか」を考えることをしないから、進歩や深掘りがありません。場合によっては、会社が発展するうえでの抵抗勢力になってしまう。私があえて「できる人」とカギカッコ付きで表記したのは、彼らが真の本当の意味で仕事ができる人とは区別すべきだと思っているからなのです。

確かに、日本が高度経済成長の時代ならそれでよかったかもしれません。欧米の先進企業のやり方をキャッチアップしていれば、会社も大きくなり業績も伸びました。けれども、1990年直後のバブル経済崩壊以降から様相は明らかに変わりました。「大量の仕事をさばくことができる人=仕事ができる人」という考え方は今や通用しません。