なぜ、億万長者は「短気で気長」なのか?
コンサルティング会社、プライスウォーターハウスが世界のビリオネア(10億ドル以上の資産を持つ人)を調査したところ、共通する1つの資質として、「短気と気長の両方を持っている」という結果が発表されていました(参考図書:『PwC公式調査でわかった10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか』)
つまり、とてもせっかちで短気目標追求する面と、取り組み始めたら粘り強くやり続ける面を併せ持つということです。
ビリオネアには興味がないという読者もいるでしょう。しかし、高いパフォーマンスを上げたいと思うビジネスパーソンにとって、この2つの面を併せ持つことを目標とする方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、私たち一般のビジネスパーソンに「短気と気長を使い分ける習慣」を当てはめてお話ししたいと思います。
【1.私たちが考えるべき3つの視点と、矛盾】
ビジネスパーソンが組織の中で果たす役割は、次の図の通りだと私は考えます。
何より最大の目的は、組織や顧客から求められる成果を最大化することです(図版内A)。そのために、組織では人材育成を上司に託します(同B)。上司も成果を最大化するためには部下を短期間でいかに育成するかが重要なテーマになってきます。また、成果を最大化するためには同時に、個人・チームの単位時間当たりの生産性を高めることも求められます(同C)。
「成果の最大化」(A)のために、「部下育成」(B)と「生産性向上」(C)があるのですが、短期的な視野で考えれば、必ずしもこの3つはバランスよく行われているわけではありません。
たとえば、Bに関して。その月の目標達成のためには、部下に仕事を任せるより自分でやったほうが早いといって、自らがやってしまうケースがしばしばあります。直近の目標のためには、部下に考えさせて失敗させる時間的余裕はないと、ついマイクロマネジメントをして、部下の自発性や主体性の芽を摘んでいるケースもよくみられます。
ではCに関してはどうか。生産性向上のために不要な業務プロセスや会議、資料作成、ルールの見直しが必要だとしても、一人の権限でできないことであれば、無理に変えようとするより、会社(上層部)の方針に従った方が短期的には作業は増えないかもしれません。仮に、業務プロセスを見直そう、などと言い出そうものなら、「お前が担当してやれ」と言われて1つプロジェクトを抱え込むことに……。
そこで重要なことは、短気と気長の視点です。