世代交代の難しさ

――経営上の課題を伺いたいのですが、将来の最大の不安要素、リスク要因は何だと感じていますか。

【軽部】リスク要因をひとつに絞るのは難しいですが、米の生産は国策ですので、国の政策次第で簡単に方向転換してしまうことがあるのは大きな不安要素です。我々のような農業生産法人にがんばってほしいと言いながら、本当にそう考えているのかと首をかしげたくなるようなことが多々あります。

――後継者の問題もよく耳にします。軽部社長は先代から見事にバトンタッチされましたが、どのようなステップで引き継がれたのですか。

【軽部】私は10年前に先代から引き継ぎました。営業の経験を見込まれて20年前に入社したのですが、当初は農業についてはまったくの素人でした。最初の10年間は現場で経験を積みながら、部分的に現場の指揮をしたり、仕組みづくりや人材採用などをやらせてもらったりしました。経営者ではありませんでしたが、いわゆる“番頭”のような立場で経営のトレーニングを積めたことはよかったと思っています。

家族経営の農家の場合、父親が経営のほとんどを担って、息子は作業しか任せてもらえないのが一般的だと思います。あるときポンと世代交代しても、帳簿もなければ、外との付き合いもない。息子が戸惑っていると、父親が口を出してきて、本人を否定するようなことを言う。世代交代がスムーズに進まないパターンです。

私の場合、遠慮のない直接の親子関係とは違って、義理の親子ならではの程よい距離感もよかったのかもしれません。営業に関しては私のほうがよくわかるということもあって、私の好きなように任せてくれました。その点では本当に恵まれていたと思います。

――軽部社長が次の世代に引き継ぐときも、同じような形で?

【軽部】そうできれば理想ですが、会社の状況が当時とは変わっています。これだけ多様な事業をひとりでみるのは難しいので、分社化したうえで経営を任せるのも一つの選択肢だろうと考えています。そのことを念頭に置いて、今も事業の責任者に多少のマネジメントの裁量を与えてはいますが……。