規模拡大を狙うには

――将来、仮に10年後に売上500億円の生産法人を目指すなら、どのような取り組みが必要だと思われますか。
本社併設の直営店は、女性客らで賑わいを見せていた。

【軽部】売上の規模を求めるなら、一般的な産業であればM&Aしかないと思います。ただ農業の場合、M&Aで拡大路線を狙うにも、つねに地域がついてまわります。地域の人たちの信条やしきたりがあり、村社会の考え方があります。よそ者に対しては排他的な傾向もあります。さらに言えば、農地には地主が必ずいらっしゃって、その人たちの了解も取らなければならない。ですからM&Aは容易ではありません。そう考えると、くり返しになりますが、地域の農家の方々を私たちがサポートして、グループとして売上拡大を追求していくのが現実的だと思います。

六星の売上は、現在約11億円です。畜産などはもっと規模が大きくなりますが、稲作に限って言えば、大規模な法人はあまりありません。加工を含めてもそうです。それが現実です。産業が発展していく過程では、業界内で規模の大きな数社が引っ張っていったり、国や業界に対して発言力を持ったりするということがあります。農業の産業化にもそういうことが必要なのかもしれません。つまり、「六星が言うなら、そうなんだね」と言われるくらいの存在になるということ。そうやって業界をもっと活性化していくことが必要だろうと、最近は思っています。

(後編に続く)

有限責任監査法人トーマツ
有限責任監査法人トーマツは、日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッドのメンバーファームの一員である。監査、マネジメントコンサルティング、株式公開支援等を提供する、日本で最大級の会計事務所のひとつ。
農林水産業ビジネス推進室
農林水産業ビジネス推進室はトーマツ内の農業ビジネス専門家に加え、農業生産法人などの農業者、小売、外食、食品メーカー、金融機関、公官庁、大学他専門機関など外部組織と連携し、日本農業の強化・成長を実現するための新しい事業モデルの構築を推進している。詳細はWebサイト(https://www2.deloitte.com/jp/aff)参照。
(大和田悠一(有限責任監査法人トーマツ)=聞き手 前田はるみ=文・構成 尾崎三朗=撮影)
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