共同作業の落とし穴「誰かがやるだろう」
理屈で考えれば、一般的には共同作業のほうが効率はいい。複数人が一緒にアイデアを出し合うことで、いろいろな視点が得られ、さまざまな穴も埋められる。それによって、すぐれた発想が生まれ、解決策も見つかり、互いに間違いの指摘もしやすくなる。ただ人数分のアイデアの足し算ではなく、混ざり合うことで新しい発想が生まれ、相乗効果につながりそうだ。
ところが複数の人が同じ作業をするときには、簡単な作業では効率が上がるものの、難しい作業ではかえって効率が下がるとされている。特に、アイデアを複数で出し合うと、たくさんの考えは出てくるものの、各人が深く掘り下げる思考の精度が下がってしまいがちだ。さらに、手作業などは大勢で作業をすると、人数が増えるにつれて一人当たりの作業量や質が低下してしまうことがある。
これが「社会的手抜き」と呼ばれるものだ。特に、みんなの仕事をあわせて結果となる合算的な課題のときに起こりやすい。簡単に言えば「今日中に何枚つくろう」といった作業のときだ。たとえばこれを綱引きでみれば、綱を引く力を1人のとき100%なら、2人のときに1人あたりの力は93%、3人なら85%、8人では49%にまで減少するといったもの。それから、サッカーなどで相手チームのほうが退場者を出しているのに、全員残っているチームのほうが精彩を欠くようなときも、これが要因のこともある。
こうして精度が落ちたり、手抜きが起きたりする背景には次のような原因があげられる。
A.内輪だけで過信:自分たちだけで慣れきって、外とのずれに気づかない。
複数人で何かを決定する作業をしているうちに、自分たちのしていることを過信して、判断力が鈍ってしまう。結果、外からの意見や情報には否定的な反応を示すようになり、間違った結論に至ることもある。
B.多数派に流れる:意見を問われて、つい多数派にまわる。
協調や同調のプレッシャーが生まれ、仕事の質よりもチームなどの関係性に重きを置くようになる。すると、たとえ自分は違うと思いながらも、多数派の意見に賛成しやすい傾向が出てしまう。
C.他人まかせの意識:たとえば、前に出てプレゼンをしている人に作業のほとんどをまかせてしまうなど。
他にも参加している人がいる状況では、他人を当てにしやすくなり、「誰かがやるだろう」とみんなの責任感が薄れる。結果として、できるだけ自分の労力を少なくしようとして怠慢を生む。
みんなで作業することで責任が拡散したり、お互いの調整がうまくできなかったり、といったロスなども挙げられるだろう。そして、何もしていなくても単純に自分が生産的であると錯覚をしがちになる危険性をはらむというわけだ。
では、共同でより生産的になるためにはどうしたらいいのだろうか。