自信があって行動していけば経験はついてくる

【三宅】今は産業界でも教育界でも、グローバル人材育成という言葉が不可欠のキーワードになっています。つまり、世界と伍していける若者をもっと増やしていこうということがあるわけです。横山さんが考えられるグローバル人材というのはどのような人物像をイメージされていますか。

【横山】僕も未熟ではあるんですけれども、グローバルな生き方というのは、まず地球のどこにいたとしても、外国の人たちとの違いを探すのではなく、共通点を見つけることではないでしょうか。積極的に共感していくわけです。このやり方なら、世界中のどこでも通用し理解しあえると思います。

【三宅】私はこの質問を何人もの方にしてきました。すると、だいたいの方は「自分との違いに気づき、相手の立場になって接していける人材」と定義します。横山さんの答えは初めてです。違いではなく、共通項を探すのですね。

【横山】共通項を探して認めあったあと、自分のスタイルを出していけばいい。それは当然受け入れられるはずですし、一緒に行動しても、お互いに切磋琢磨できるという気がします。

【三宅】これは理論ではなく行動が先に出る人の言葉ですね。すごく横山カズさんらしいです。

【横山】僕が英語の勉強を通していつも強調しているのが、英語学習で自信をつければ、いろんな可能性が広がるということ。多種多様な夢がかなうかもしれないですね。そうした勉強をする過程で「自分はどんな存在になりたいのか」ということを問い続けることが重要でしょう。

グローバル人材って聞くと、ちょっと抽象的ですが、普段から外国人と流暢に英語で格好よく話しているみたいな人を思い浮かべますよね。けれども、そんなイメージを吹き飛ばすような実際の行動が大事だと考えています。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

とにかく、英語の習得の主人公はあくまで自分自身だと思えば、自分の個性を英語学習の過程でしっかりとらえながら、自分が物事に対してどう感じ考えているかを深く知り、理想を確かめてほしいと思います。その過程でコミュニケートする相手との共通点を見つけ、気持ちを通い合わせられれば良いわけですね。

【三宅】それを同時通訳という仕事の現場で実践しているからこそ、自信を持って言えるわけですね。

【横山】語学と教育は夢がないといけない。まして英語を武器にして世の中に役立とうとすれば、その実現には理想と情熱がいるんですね。頭ではなんとなくかわる気はするものなのですが。それを自分の英語とか自分の五体とか身体を通して行動に変えていく。そのための道筋が日々の学習ですね。これは、地球のどこでも通じるような方程式です。自信があって、行動していけば経験はついてくるじゃないですか。

【三宅】ぜひ日本人の英語学習者へ励ましのメッセージをお願いしたいのですが。

【横山】現在、通訳だけでなく、いろんなメディアを通して英語の指導もさせていただきながら思うことがあります。それは、知識だけじゃなくて、英語を自分の体で感じて使えるようになる楽しさと、そこから自信を手に入れる素晴らしさを実感してほしいということです。

先日、クライアントの企業トップの方が、ある国際大学の留学生に向けてスピーチする原稿を英文に訳しました。思い切って訳していいと言われていましたから、スピーチの最後の部分、「これからずっと充実した人生を成功しながら歩んでください」と語りかけるところを、国境を越え、世界を舞台としているその企業のイメージをとらえ、このような英語にしました。

<I pray that you will spread your wings toward your continued success in the future. >

未来の成功に向けて、あなたの翼で羽ばたいてほしいと。僕は、英語は翼であると信じています。

【三宅】本日はありがとうございました。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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