7月10日、文部科学省は大学入試センター試験に代わり2020年度から始まる「大学入試共通テスト」について、実施方針の最終案を公表した。テストが変われば、教育現場も対応せざるを得ない。いま何が起きているのだろうか。英会話教室イーオン・三宅義和社長が、現役高校教師で、「英語教育・達人セミナー」の代表をつとめる谷口幸夫さんに聞いた――。

大学入試に関係ないと教育ができないか

谷口幸夫・東京都立小平高等学校教諭/英語教育・達人セミナー代表

【三宅義和・イーオン社長】日本の英語教育の現場が大きく変わりつつあります。現行の高等学校学習指導要領には「授業は英語で行うことを基本とする」とうたわれています。実際、谷口先生の高校ではどうでしょうか。また、先生ご自身は授業を英語で行うことについて、どうお考えですか。

【谷口幸夫・東京都立小平高等学校教諭/英語教育・達人セミナー代表】私は、英語で授業を行うというよりも、生徒に英語を使わせることに主眼を置くべきだと考えているんです。それに、英語で授業を行うことは決してむずかしくありません。

例えば、極論を言いますが、名前、出席番号を呼び、「Page 20. Line No.10. Read the sentence」、そして「Put into Japanese」と言えば、授業は成立します。その生徒が終われば「Good」。そして「Next」と次に行く。その繰り返しでいいわけですから簡単でしょう。それよりも大変なのは、授業中に生徒が英語を使うことなんです。言い換えると,生徒に英語を使わせることが最も大切。もちろん、相応の工夫が必要ですが、私はそちらに力を入れています。

【三宅】生徒に英語を使わせるというのは、スピーキングの指導にもつながると思いますが、現在、大学入試のセンター試験にスピーキングテストはありません。ライティングもない。やはり、大学入試に関係しないと、学校のほうでは力が入らないのではないでしょうか。

【谷口】実は「達セミ」でも講義してもらいましたが、広島県広島市に西厳弘さんという英語教師がいます。まさに、スピーキング指導の実践家で、彼の場合「ワードカウンターシート」を使います。これは1分間に何語、英語を話せたかを数えるためのツールです。

シートに1から100ぐらいまでの数字が書いてあるだけで、スピーチのテーマを決めて、時間は1分間。「よーい、スタート」で、いくつ単語を話すか数えます。

【三宅】単語の数をシートの数字に合わせて追うのでしょうか。

【谷口】そうです。指やペンで追っていきます。生徒が話すのは、まだゆっくりですから、数えられます。慣れてくると、本当にサクサク数えることができます。

私自身、この10年間で登場した教材・教具のなかでは,一番シンプルで非常にすぐれたものだと思っています。だから、これは全国に広まればいいかなと思っていましたが、先日、沖縄で開催した「達セミ」では、4人の発表者のうち、3人がワードカウンターについて話していました。

【三宅】何語まで話しましょうという目標があるのですか。

【谷口】ありません。ただ、おおむね1分間で100語。ただ、話しっぱなしでは身につかないので、話したあと、それを書かせます。この場合は3分間。70語書ければOK。つまり、1分間で100語話して、3分間で70語書ければ、高校生としては上位レベルいう感じです。実際、この4月に赴任した当初は10とか20語ぐらいしか話せなかった生徒が、3カ月ぐらいたって70語~80語に増えていますので、これはもうマジックツール、ミラクルツールです。