同時通訳に必要なのは場数と経験

三宅義和・イーオン社長

【三宅】まさにプロ根性と言いますか、仕事に対する意気込みを感じさせてもらった気がします。私自身にとっても、改めて英語学習についてモチベーションが上がりますし、1人でも多くの英語学習者に聞かせたい話ですね。横山さんが講演でも支持される理由がよくわかりました。ところで、素朴な疑問なのですが、英語から日本語に訳すのと、日本語から英語にしていくとでは、どちらが大変なのでしょう。

【横山】人それぞれでしょうね。僕の場合は、あえていえば、英語から日本語です。ただ、その齟齬を少しでも埋めていくには、場数と経験、そして練習法の工夫しかないと思います。

【三宅】最近、若者が海外にあまり出たがらないという話も聞きます。しかし、外国に行くと、さまざまな体験をするはずです。そこから日本の魅力を再発見するというようなことも当然ありますよね。

【横山】ありますね。僕自身、帰国子女でもなく、大学時代の留学経験もありません。日本の再発見というと大げさですが、例えば、カナダのユーコン準州というところにしばらくいたことがあります。

自然がすごく雄大なんですが、どこか荒涼としていて変化がない。気がついたら、盆栽のように小さな空間のなかにも繊細な趣のある日本の景色に飢えているんですよ。おそらくそれが、日本人としてのアイデンティティの確認なのかなと思いました。

【三宅】やっぱり日本人なのですね(笑)。

【横山】海外経験ではこんなこともありました。数年前、仕事で旧ソ連のリトアニアに行ったときのことです。この国は、すごく格闘技が盛んなところなんです。僕が武道や格闘技の経験があると知った現地の人が総合格闘技やK-1の選手もいる道場に見学に行きたいか」と話しかけてきたものですから、「もちろん」ということでついて行きました。

なぜか更衣室に通され、数分たつとものすごくゴッツイ男たちが部屋になだれ込んできました。しばらく待っていると、コーチのような人がやって来て「きょうは日本人格闘家が見学に来た」と紹介されてしまいました。すると、何人かの選手たちが「よろしくな」と英語で握手をしてきました。ソ連が崩壊して、すごく時間がたっていて、教育も変化していてみんな英語を話すんですね。たぶん、海外遠征などで身につけたのでしょう。スパーリングに誘われて、僕も引き下がれないですよね。182cmほどで体重が3ケタない私では、本場の大型プロ選手になかなか大変な目に遭いました。

【三宅】それはまた壮絶な体験ですね。

【横山】ところが、楽しいんですよ。たまにはギブアップを取れたりして、「おう、やるじゃないか」と言ってくるのも全部英語。プライベートな出来事ですが、そのとき、本当に英語をやっていてよかったと思いました。痛みも忘れるぐらいでしたね(笑)。