なお、肝心の英国のEU離脱問題はどう影響するかといえば、英国側にとってもEU側にとっても、経済的打撃は限定的になると想定される。というのも、英国はEU各国からさまざまなモノを大量に輸入している。EUを代表する大国のドイツ、フランス、オランダにとっても、英国は大のお得意様だ。この先、英国とEUは離脱条件を固めていくことになるが、EU側がその条件を厳しくしすぎた結果、英国の経済状況が悪化すると、共倒れは免れられない。よって、離脱条件はそれほど厳しいものになるとは考えにくく、英国とEUの距離感は、今後も“つかず離れず”のままで継続されていくだろう。

現状ポンドが過敏な動きをしているのは明らかに騒ぎすぎだ。来年以降離脱が現実のものとなったときは、すでに織り込み済みで、マーケットが反応しない可能性も高い。

だが、そもそも英国のEU離脱問題勃発前から、ポンド・ユーロはマーケットの過敏な反応で売り込まれてきた。

これまでは、危機的状況になるたびに欧州中央銀行(ECB)が介入しており、「何かあってもECBが何とかしてくれる」という落としどころが見えているのが現状だ。

そのため、この先もポンド・ユーロ資産がかつてない水準まで値下がりする事態は考えづらく、この先むしろ回復することも見込まれる。ただ、回復するにしても、そのスピードは確実にスローペースになる。塩漬けのポンド・ユーロ資産はそのまま持っていてもいいが、効率的な資産運用を目指すのであれば、損切りして別の投資対象に資金を回すのが賢明だ。

(構成=元山夏香)
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