ブランド構築戦略にとって重要な旗艦店

かつてマツダは首都圏にショールームを持っていた。たとえば世田谷区の環状八号線沿いにM2(1991年~1995年)という名称の自前の建築物、渋谷区にはマツダロータリー原宿(1980年~1993年)があった。業績が回復しブランド戦略に邁進している現在、同社がショールームの適地を探していないわけではないと思われるが、それが見つかったとしても一朝一夕には実現しないだろう。それだけに、この高田馬場店にショールームの機能を持たせることがマツダのブランド構築戦略にとって重要なテーマだった。

間口が60メートルもあるこの店舗の外観は、したがって、単なるディーラーというよりも、まさにショールームの趣がある。

ショールームの機能があるからこそ、前田が目論む“製品=作品にふさわしい販売の空間”が生まれたのではないか。新しいぶどう酒を入れる新しい革袋が完成した。

売り上げを上げなければならない販売店に、販売とは必ずしもなじまないショールームの機能を持たせるという一石二鳥を追いかける試みをすることによって、それがマイナスになるのではなく、逆に相乗効果を生み、来店客と店舗スタッフが同じ方向の目線でクルマをながめる、というこれまでには見られなかった販売形態を創出する可能性が出てきた。それだけに、マツダ本社の期待も大きいはずだ。

「ショールームの機能を!」と計画時に頭を悩ました西山が、同店のお披露目会で見せた笑顔に、彼らの期待の大きさとそして自信が表れていた。

(文中敬称略)

(宮本喜一写真)
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