米国的「前向きの熱気」は消え、プアホワイトは……
米国の力が落ちていると言えばそれまでですが、実は、オバマ大統領が選ばれた2008年の大統領選挙でもこれまでの潮流が変わりつつある傾向はあったのではないかと私は思っています。
選挙はちょうどリーマンショック(同年9月)の直後でしたが、バブル崩壊後の大ショックと所得の二極化が進む閉塞感の中で、これまでとは違った「Change」を主張した黒人のオバマ氏が大統領に選ばれました。
今回の選挙もその閉塞感を引きずったまま、二極化がさらに進んだ状況での選挙ですが、オバマ大統領が選ばれた時と大きく違うのは、米国に前向きの姿勢が見えないことです。
オバマ氏はしきりに「Yes, we can.」を強調し、国民もその時は非常に前向きの姿勢で熱狂しました。しかし、今回はそのような前向きの熱気はありませんでした。勝ったトランプ氏も負けたクリントン氏も「内向き」の傾向がとても強く、トランプ氏は移民の排斥や日本に防衛の負担増を求めていましたし、クリントン氏も含めTPPには反対の立場を取りました。
中東やアフリカで大規模な内戦やテロが頻発していることや、中国はじめ、同盟国と言えるフィリピンまでもが米国と一線を画すという状況は、米国の影響力が従来のものでなくなりつつあることと関係しているでしょう。これも「内向き」と大きく関係しています。
以前にもAI(人工知能)の話を書きましたが、それにより経済格差はさらに拡大すると私は考えています。米国の相対的地位の低下とともに、米国のみならず、世界中での二極化の進展は、従来あったバランスがこの先も大きく変わっていくことを意味しているでしょう。