レシートには宛名がないが……

ただレシートの書面には宛名がないものがほとんどなので、誰のためにその金額を支出したのか明確ではない。個人での買い物や飲食でもレシートはもらえるので、会社経費で購入したと示すために必ず宛名がある領収書でないといけないと考える経理担当者もいた。たしかにレシートは誰のためにその金額を支出したのか明確ではない。しかし証明力という点でいえば、手書きの領収書についても、それを書く人は宛名の会社の存在など何も確認はしていない。それほど大差はないと言える。むしろ書類のたたずまいとして会社名を要求している面がある。

なお手書き領収書との比較ではないが、各種ポイントカードの使用を隠すために、レシートの下段を切り取って提出する社員もいる。それもまっすぐ切っていればともかく、ななめに切られていることもある。資料には手を加えてはいけない。切り取ったものかどうかくらいは、経理担当者が見ればすぐにわかるのである。

経理規定で「手書き領収書ではなく、明細の入ったレシートを提出すること」とルール化しても、すべてがレシートには振り替わらない。

ホテルやFCの店舗は、ほとんどがレシートだが、地方の飲食店ではレジを置いていないこともある。都心でも昔風の小さな喫茶店や商店などは手書き領収書が多い。さらに駐車場の一部(かなり機械化が進んでいるが)や運転代行業者は手書きが中心である。

ただ都心であれば「レシートを取得できる店舗を使え」と言ってもそれほど困らない。

レシートの提出を徹底すると、精算票に「この店はレシートを発行していません」と書いて手書き領収書をつけてくる社員もいる。しかし経理担当者は不審に思えば「おたくの店はレシートを発行していないのですか?」くらいのことは電話で確認する。そうすると何割かは「発行しています」という回答が返ってくるそうだ。なかには、「和民ではレシートが出ません」と言い訳が書かれた精算票を受け取った経理担当者もいる。言うまでもないが、和民でレシートが出ることは誰もが知っている。

また「レシートをくれない店の使用は今後控えます」と書いておきながら、すぐに同じ店での飲食の精算票を提出してくる社員もいる。こうなると、その社員の書類は「信頼できない」と烙印を押すことになるだろう。

このように見てくるとコンプライアンス面では、レシートの方が信頼度も高いと言えそうだ。またレシートの方が税務署のウケが良いというのには、レジスターをきちんと使っている店舗や業者は取引の相手方として税務上も安心できるとの判断もあるのだろう。

以上述べてきたような手書き領収書、レシートの持つ巧拙も考慮に入れながら経理部としてはどういう書類を徴求するかを再検討することも一法であろう。

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