中学生レベルでもディベートはできます

【三宅】それはやさしいものから始められた効用ですね。

【松本】そうだと思います。読んでいると、なんか気になる単語とか表現ありますよね。繰り返し出てくるので、前後の文脈から、ある程度、意味の目星はついてきます。その頃から、英英辞典で調べるようになりました。それでも意味が曖昧なら英和辞典を使う。いずれにしても、英英辞典が先というようにしました。

【三宅】なるほど。1ページに見たことがない単語が1つぐらいで、内容を知っているものから読まれた。それを続けていくことで、英語で読み、そのまま理解することができるようになったということですね。

【松本】訳さないでわかるということを実感したことは大きな収穫でした。それからは、ちょっと背伸びして政治学とか経済学の本を英語で読んだりしました。その後ディベートをやり始めたので、『フォーブス』とか『ニューズウィーク』などの記事を自分のディベートのテーマに合わせて読みました。テーマについては事前に学習していますから、ある程度の知識があります。雑誌記事に何が書いてあるかもだいたい推測がつくので、時事問題の英語表現もわかるようになっていきました。記事の内容を訳さずに掴むことがすごく大事だなということを、そこでも実感しました。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】それではリスニングはどうやって鍛えられたんですか。やはり、ディベートの訓練の中で上達していったのでしょうか。

【松本】今はあまり行われない学習法ですが、英語を聞きながら、一語一句をそのまま書き取る「ディクテーション」をやりました。それから、先ほど言いました「ラジオ英会話」は、番組を録音して、1日20回ぐらいは聴き込みました。週の半ばの水曜日になったら月火水の3日分を全部聴きかえす。木曜日になったら月火水木というようにしていけば、そのぐらいの回数になります。そうしていると、1週間経つと、覚えようとしなくても覚えられているという状態になります。

【三宅】よく、日本人は和を尊ぶので、ディベートは合わないといった意見もあるようです。あるいは、高度な英語力がないと無理だと思う人も多いでしょう。先生の話をお聞きすると、英語学習としてディベートをやる意味合いは大きいですね。

【松本】例えば、中学生レベルでもディベートはできます。それほどむずかしくありません。立場を決めて、その立場に立って何か発言すればいいわけですから。そして、テーマから相手の主張を予測することもできるわけです。ディスカッションほど複雑ではない。ですから、私が代表著者を務めている中学校の検定教科書にもディベート活動を組み込んでいます。「給食と弁当はどちらがいいか」といったことを議論するのですが、生徒たちも非常に興味を持ち、英語を身近に感じるようです。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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