似た属性の人に不幸が訪れると、脳が「喜ぶ」

この実験には続きがあります。

相手が、不幸に見舞われたとき、人は同情してあげられるでしょうか。

・一郎の高級外車は故障ばかりします。昨夜、高級フレンチで外食して食中毒になりました
・並子の中古の軽自動車は故障ばかりします。昨夜カップラーメンを食べてお腹を壊しました

一郎の不幸を見たときに、被験者(主人公)の脳で活動した領域は、脳の深い部分にある線条体という部分でした。線条体はおいしい食べ物やお金を得たときに報酬に反応する報酬系という部位です。一方、並子の不幸を見たときには、線条体は活動しませんでした。かわいそうですからね。

妬ましい他人に不幸が起こった場合には、前部帯状回の心の痛みがやわらぎ、それと同時においしい食べ物やお金を得たときのように、無意識に自然と喜びが湧き上がってくるのです。これは、理性を司る部位よりもずっと深い部分にあり、無意識的に喜びが沸き上がるため理性による制御は難しいです。本能的な反応と言えます。

これで、宗教的・倫理的にどのような主張をしようが、「他人の不幸は蜜の味」というのは、自己欺瞞によって覆い隠しようがない厳然たる事実だということがはっきりしたのではないでしょうか。

結局のところ、ここが高収入貧乏の谷を渡る命綱なんですよね。

人間には妬みがあります。そして、妬みを感じると心が痛いため、それを和らげるため自分の社会的地位を示すために衒示的消費(誇示的消費、みせびらかしの消費)を衝動的に行いがちです。

“ママーカースト”で女性たちが身につけるものや持ち物を競い合い、タワーマンション族が同じマンションの中で広さや階数、方角、持っている車などで互いを格付けします。実は前述の実験で、被験者には次のような条件がありました。

●一郎:主人公と趣味、価値観、人生目標など共通点が多い。
●花子:主人公とは趣味、価値観、人生目標が異なる。
●並子:主人公とは趣味、価値観、人生目標が異なる。

主人公が最も妬んだのは、前述したものと同じで、自分と趣味、価値観、人生目標など共通点が多い一郎。その次に妬まれたのが花子でした。つまり趣味など「属性」が同じ(もしくは近い)者同士は妬み合いやすいのです。そして、並子のように、主人公と全く異なる価値観や人生目標を持つ者は妬む理由がないため、無関心です。