老親の介護を遺産分割に反映させるには

遺産分割の比率も争いのタネ。現民法では長男も次男もなく、子供の法定相続分は一律である。もし長男一家が親と同居し、長男の妻が最期まで親の面倒を見たとしても、次男が要求すれば同じ額の遺産を受け取れる。親の介護は相続における「寄与分」にならないのだろうか。

「寄与分の考えは介護にはほとんど適用されません」。寄与分とは、親の財産を増やすことに貢献した相続人が貢献度に応じて財産を多く受け取ることができるというもの。介護は財産を「増やす」ことにはならないため、寄与分は認められないのだ。

そこで「面倒を見てくれた長男の嫁に報いるための最もよい方法は、養子縁組をすることです」と天野氏はいう。子供の配偶者はそれだけでは相続人にはなれない。養子縁組をすることで、長男や次男と平等の相続人になれるのである。

トラブルなき相続には遺言書が有効だといわれる。だが、実際には進んで遺言を書く人は少ないという。

「遺言書があった場合でも、中身を読むと『誰かに書かされたのではないか』と思われるものも多いですね」

遺言には気軽に作成できる「自筆証書遺言」と、本人が公証役場に出向いて作成する「公正証書遺言」とがある。後者のほうが安心だが、偽造されるおそれもゼロではない。

01年に亡くなった女性が公正証書遺言を作成していたが、遺言作成時に公証役場へ出向いたのは「替え玉」ではないかという疑惑が浮上したのだ。作成にあたっては、証人2人も立ち会い、公証人が印鑑証明や実印で本人確認をするのがルールだが、別人がなりすまして遺言を作成していた可能性があるという。このときの遺言内容が、以前に作成していた遺言とはかけ離れていたからだ。写真付き証明書による本人確認ができていなかったことが、疑惑を持たれる遠因だと指摘されている。

天野 隆
税理士法人レガシィ代表社員税理士。公認会計士。1951年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。アーサーアンダーセン会計事務所を経て現職。税理士法人レガシィは、相続案件実績約5600件で日本一。
(文=向山 勇 撮影=堀 隆弘)
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